2024年12月22日(日)

プーチンのロシア

2023年10月2日

 ウクライナ軍内で相次ぎ発覚している汚職問題が、ロシアに対する反転攻勢作戦の先行きに影を落としている。徴兵を見逃す見返りとして、当局幹部が巨額の賄賂を得ていた事実が明るみに出ているためだ。

ゼレンスキー大統領は、国内外の問題と闘っている(AP/アフロ)

 戦争が激化、長期化し、徴兵作業は厳しさを増すなか、一連の事態は国民の士気を下げるのは確実。ゼレンスキー政権は、違法行為の徹底的な摘発や、人事の入れ替えを進めているが、一連の問題は国内の厭戦気分を高めるだけでなく、国際社会によるウクライナへの支援の継続にも支障を及ぼしかねない。

徴兵逃れるためにウソの証明書発行

 「俺は何も知らない。俺は何も買っていない。もう、十分説明しただろう。俺は関係ない。俺の親類がスペインで土地を買ったかどうかなど、聞いていない」

 ウクライナ南部オデッサ州で、「徴兵事務所」のトップを務めるイェベン・ボリソフ軍事委員は現地メディアの取材に、そう語るのが精いっぱいだった。委員は、男性が徴兵を逃れるために「重い病気に罹患している」などと〝ウソ〟の証明を行う「兵役免除証明書」を発行する斡旋ビジネスで、巨額の利益を得ていた。さらにその利益で、親族らがスペインで400万ドル相当の別荘や高級自動車を購入していた事実も発覚した。

 黒海沿岸にあるオデッサ州は、ロシア軍が占領するクリミア半島に隣接するウクライナの重要拠点で、ロシア軍によるミサイル攻撃に繰り返し苦しめられている地域だ。そのような州で、このような不正が堂々と行われていた事実は、国民に強い衝撃を与えた。

 同委員はその後逮捕され、解任されたが、類似の事件の発覚は、ウクライナ国内で後を絶たない。業を煮やしたゼレンスキー大統領は8月、徴兵の責任を担う国内のすべての州の軍事委員の解任を発表。さらに、徴兵をめぐる不正について、112件もの刑事手続きが行われていると表明した。

 「徴兵の業務については、前線で戦い、健康と、(地雷などで)足を失いながらも、ウクライナの尊厳を守った人々が付くことこそが望ましい」とも主張し、負傷兵らに寄り沿う姿勢も強調した。

 ゼレンスキー氏は同月末にも、演説中に「兵役免除証明書の提出が、昨年2月の開戦時と比べて、十倍以上に膨らんだ州がある」と指摘し、それらのケースを調査していると表明した。違法な証明書の取得には「3000~1万5000ドルが支払われている」と具体的な金額まで明かし、政府として問題を看過しない姿勢を強調した。

 『Wedge』2022年6月号で「プーチンによる戦争に世界は決して屈しない」を特集しております。特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます。

新着記事

»もっと見る