2023年12月6日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年10月25日

»著者プロフィール
著者
閉じる

久末亮一 (ひさすえ・りょういち)

日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所 副主任研究員

学術博士(東京大学)。香港大学客員研究員、東京大学大学院助教、政策研究大学院大学安全保障・国際問題プログラム研究助手などを経て現職。著書に『香港「帝国の時代」のゲートウェイ』(名古屋大学出版会)など。

 10月17・18日、北京では10周年を迎えた「一帯一路」構想についての「第3回国際協力サミットフォーラム」が開催された。そこには中国の「老朋友」(18日の習近平発言)であるロシアのプーチンをはじめ、イラン、タリバンが支配するアフガニスタンなど、いわくつきの「盟友」諸国をはじめ、中国側の発表では140カ国前後が参加したとされる。

第3回国際協力サミットフォーラムの開会式で演説する習近平(ロイター/アフロ)

 もっとも一連の行事は、近年露見しつつある「一帯一路」への逆風もあってか、これまで習近平が好んできた、中国の「偉大さ」を印象付けようとする大時代がかった演出はなく、淡々と内容が進んだ印象がある。首脳級の参加も前回の約40人から24人に減少した上、ロシアが参加したことで「共同声明」への署名を渋る国が出たため、総括は異例の「議長声明」という形になった。

 「一帯一路」の方向性自体も、18日の習近平の基調講演では昨今の問題を意識したためか、今後は「ハード面からソフト面の協力」、「持続可能なことが重要原則」、「質の高い発展」に転換すると述べた点が印象的であった。

「一帯一路」の実績と躓き

 中国から、ユーラシアの陸路を経由して欧州へ、あるいは東南アジアの海陸路とインド洋を通じて中東を回り欧州やアフリカまでを結ぶ「一帯一路」構想が、2013年に習近平によって発表された際、それは実現性の疑わしい夢物語のようも思われた。

 しかし、この10年間で中国は、習近平の威光と、彼が唱える「中華民族の偉大な復興」を体現するため、政府系資金や自国企業を動員し、全方位で採算度外視の資源投入をおこない、巨大な借款やインフラ計画を強引な勢いで推進してきた。この結果、「一帯一路」には150カ国以上が参加し、投じられた資金は約1兆ドル以上、参加国との貿易総額は1.7倍に増加したとされる。

 もっとも、近年では問題や躓きにも焦点が当たっている。スリランカの債務危機と破綻国家化に象徴される、被援助国の実際の返済能力を無視した、中国の巨額借款が引き起こす「債務の罠」問題、あるいは東南・南アジアやアフリカでの、現地権力者と癒着した中国による乱開発と利益独占、これに対する現地住民の反発という問題は、周知のとおりである。

 さらに「一帯一路」に参加しても実質的利益が得られないとして、イタリアの現政権は同構想からの脱退を固めつつある。何よりも、目下は中国自体の経済力が低迷し、国内債務の増加や外貨準備の減少が顕在化する中で、かつてのような野放図な資源投入は、もはや難しくなっている。


新着記事

»もっと見る