2024年6月25日(火)

21世紀の安全保障論

2023年11月22日

 そもそも、ハマスによるイスラエル攻撃前の今夏には、ワシントン州選出のプラミラ・ジャヤパル下院議員がイスラエルのことを「人種差別的国家」と形容して物議をかもしている。最近でも、最終的には否決されたものの、イスラエルに対して批判的なコメントをしたパレスチナ系のラシダ・タリーブ下院議員(ミシガン州選出)に対する問責決議が提出された。

 バイデン大統領にとっては、身内である民主党議員から「造反」のような動きが出ていることは、再選運動へ本格始動しようという時に必ずしもプラスにならない。一方、イスラエルに対する全面的支持を貫くことで民主党内から反発を招くリスクがある。つまり「あちらを立てればこちらが立たず」という状況になりつつあるのだ。

 さらにバイデン政権にとって悩ましいのは、イスラエルを支援しようにも、支援に欠かせない追加予算のカギを握る議会が10月以降、まともに機能していないことだ。10月には、ケビン・マッカーシー下院議長解任から、下院議長の席は3週間強、空白が続くという、アメリカ建国史上初の異常事態が生まれた。

 10月25日にようやく後任に選ばれたマイク・ジョンソン下院議長も、下院議員としての経験がそもそも8年しかなく、経験不足感は否めない。しかも、彼が選ばれたのは、その前に3人の候補の名前が浮上しては消え、共和党議員の間に「さすがにこれはまずい」という「下院議長選挙疲れ」が漂い始めたこと、トランプ前大統領も同議長について「まぁ、彼も悪いくないんじゃない」とポスト(ツイート)したこともあり、積極的な支持で選出されたわけではない。

 しかも、マッカーシー前下院議長が共和党保守派と交渉の際に改正し、自らの解任に繋がった「1人の議員でも下院議長の解任動議を提出することができる」という規則は依然、手つかずのまま。ジョンソン新下院議長の立場が安定しているとは言い難い。

 このように下院が空転を続ける中、連邦政府閉鎖を回避するため何らかの措置を取らなければいけない期限が11月17日に迫っていた。この危機は、年明けまで昨年度レベルの支出を維持するという継続決議が11月14~15日にかけて上下両院で可決された後、16日に、サンフランシスコのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席中のバイデン大統領の署名を得て成立したことで、再びギリギリのところで回避された。

 しかし、この継続決議案のどちらにも、対イスラエル、対ウクライナ支援の予算は含まれていない。両国に対する支援を一括法案として審議することを求めているバイデン政権側と、対イスラエル支援法案のみ先に審議することを求めている下院共和党との溝は全く埋まっていないからだ。

APECの「成果」も不発

 何よりも、バイデン政権にとっては、先週のサンフランシスコAPEC首脳会議に全日程通して滞在し、「インド太平洋を引き続き重視している」というメッセージを打ち出したかったにもかかわらず、肝心のAPEC首脳会議や首脳会議中にバイデン大統領が参加国と行った首脳会議の結果がほとんど関心を集めなかったのは、想定外だっただろう。APEC首脳会談期間中に最も関心を集めたのは、米中首脳会談と米メキシコ会談だが、どちらの二国間首脳会談でも、最も注目されたのは、米国で若年層の死亡増加を招いて大きな問題になっている合成麻薬「フェンタニル」規制に関する協力をめぐる合意で、内政問題だ。

 2022年から続くロシア・ウクライナ戦争が長期化の様相を呈しているのに加え、イスラエル・ハマス紛争も打開に向けた着地点が見いだせず、21年のアフガニスタンからの撤退の混乱に始まり、外交で足を取られてばかりのバイデン政権。再選に向けての見通しは、黄信号からどんどん赤信号に近くなりつつある。

「特集:中東動乱 イスラエル・ハマス衝突」の記事はこちら
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