2024年12月3日(火)

21世紀の安全保障論

2023年11月22日

 第4次中東戦争開戦日から50年が経過した10月7日に、イスラム組織ハマスがガザ地区を越えてイスラエルに侵入、1000人以上のイスラエル民間人が犠牲になってから1カ月が経過した。「イスラエル版9・11」と一部で呼ばれるほどのインパクトを世界に与えたハマスによる攻撃にイスラエルが熾烈な反撃を加えたことで始まったこの紛争は、鎮静化の兆しを見せない。それどころか、「ハマスをせん滅するまで停戦はない」というイスラエルのネタニヤフ首相の言葉どおり、紛争は長期化の様相を呈している。

(代表撮影/ロイター/アフロ)

変化するイスラエルへの視線

 紛争開始直後こそ、イスラエル民間人、特に女性、子ども、老人がハマスによって無残に殺害されている映像がSNSなどを通じて全世界に拡散、ハマスが外国人を含む数百人の人質を連れ去ったことが明らかになり、国際社会の圧倒的な同情と支持がイスラエルに寄せられていた。

 しかし、武力衝突が長引くにつれ、イスラエル軍の攻撃により、パレスチナ民間人の死傷者数は上昇。海外からの援助で建設された病院や学校などの公共施設がイスラエル軍の空爆により次々と破壊されるにしたがい、イスラエルの武力行使は「正当防衛だとしても過剰」という声が聞かれるようになった。

 11月7~8日にかけて東京で開催された主要7カ国(G7)外相会議でも、即時停戦を求めるにはいたらなかったものの、ガザ地区の民間人を避難させ、救援物質を運搬することを目的にした人道的見地からの戦闘の一時停止(humanitarian pause)の重要性が議論された。

 米国でも前述のとおり、紛争開始当初は、イスラエル支持が圧倒的に多かったが、この1カ月で随分変わった。

 11月16日に公開された、政治問題に関する世論調査で知られるキニパック大学が行った世論調査では、特に10代後半~30半ばの若い世代の間でイスラエルに共感する有権者の割合が大きく減り、パレスチナに共感を覚える有権者の割合が50%を超えたという結果が出ている。米国の首都ワシントンでも、紛争開始当初はイスラエル支持を訴える集会ばかりだったが、ここ2週間ほどはイスラエル支持集会とパレスチナ支持集会が週末ごとに交互に行われている。イスラエルの最大かつ最強のサポーターである米国内も変わってきている。


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