フィナンシャル・タイムズ紙のビーティー貿易担当記者が、11月2日付け同紙掲載の論説‘Rolling with the Biden punch on managed trade’で、バイデンの管理貿易は良い考えではないがトランプのニヒリスティックな経済政策をもう4年やるよりはまだマシだと述べている。主要点は次の通り。
関係国が貿易障壁を設けるたびに、1930年代の保護主義だと警告されるが、実際は、70年代や80年代(それほど悪い時代ではなかった)への回帰だ。1970年代に米国は輸出大国として台頭する日本に存立上の脅威を抱き始め、日本に自動車や半導体等一連の「管理貿易」の合意を強要した。
それを模倣するように、トランプとバイデンは米国の鉄鋼とアルミニウム産業保護のために貿易障壁と輸入割当を導入した。バイデンは、2021年に対欧関税を一時停止し、それに代わって関税割当を導入した。しかし、欧州連合(EU)が対中鉄鋼輸入を排除するためのクラブに同意しない限り、関税を再開すると脅かしている。
1970年代や80年代から学べる一般的な教訓は、永続的な害を避けるために関税や障壁は甘受するということだ。
81年、レーガン政権は日本に自動車輸出自主規制(VER)を強要した。日本は、広範な貿易戦争を恐れ、それを受け入れた。レーガンが85年にVERを取り下げた後も10年近くにわたり対米自動車輸出を規制した。
バイデンの中国の鉄鋼に関する提案について、EUは、長期的なコミットメントは避けながら、政治的対立と短期的な経済打撃を最小限に抑えるようにすべきだ。EUは、早期に、永久的に撤回することにこだわっているようだ。割当制度は、EUの鉄鋼産業や国際貿易規則にとり壊滅的なことではなく、米欧交渉が続く限りそのままにしておくことが恐らく最も害が少ない。
EUは、関税の撤廃等を声高に要求することによって米国の鉄鋼生産州を怒らせるよりも、来年の大統領選挙までの間、バイデンを政治的にサポートする覚悟が必要だ。バイデンの管理貿易は悪い考えだが、トランプの経済的ニヒリズムの4年間よりはマシだ。
多国間貿易規則が弱い世界では、戦う対象を選ぶことが重要だ。EUと米国の全面的な貿易紛争は、双方にとって賢明でない。70年代と80年代の管理貿易の教訓は、倒れないように風に乗って揺らぐことだ。当時、日本の自動車や半導体産業は、米国の策略にもかかわらず、世界的なプレーヤーになる道を続けた。今日、EUは必要なところでは譲り、最重要なところでは堅持することにより、経済と環境へのコミットメントを守ることができる。
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