2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月18日

 イスラエルとハマスの戦争については、それが地域戦争に拡大しないかということが大きな論点の一つである。これは、イランがこの戦争に直接参加してくるか否かによって決まる。もし地域戦争になれば、1973年の石油ショックの再来になる。

 上記の論説は、イラン情勢に詳しい専門家がイランの考え方を説明したものであり、参考になる。7つの理由を挙げて、ガザ戦争が地域戦争につながることはないだろう予測している。この見方には同意できる。

 中東地域というのはユダヤ、ペルシャ、アラブ、トルコの4民族がその内部に分裂を抱えつつ角逐している地域であると考えられるが、上記の論説は、そのことをよく踏まえたうえで分析している。

 ハマスは10月7日の攻撃により、アイアン・ドームのようなハイテク防衛技術に頼ったイスラエルの抑止政策に強烈な打撃を与えはしたが、イランのイスラエルへの見方や地域における力学に変化を与えた訳ではない。

 イランは乱暴な国であるという見方があるが、イランは利害得失をよく考えて慎重に物事を進めていく国である。イランの強硬派は、ハマスの壊滅はヒズボラの崩壊に直結し、最終的にはイランへの軍事攻撃になるとして、イランの代理勢力によるイラクとシリアでの米軍攻撃を支持している。これに対し、穏健派は、イラン・米戦争は破壊的な結果を招く、イスラエルはイラン・米戦争を歓迎する、と警告してきた。

核開発への懸念は残る

 イランの核兵器開発が加速する可能性についての指摘は、その通りであろう。トランプがイランの核兵器開発を遅らせるイラン米核合意包括的共同行動計画(JCPOA)を反古にしたのは、実に愚かな決定であった。

 イランの核兵器開発はもう止まらないと思われる。イスラエルの極端民族主義者の閣僚エリヤフが、ガザに原爆を落とし皆殺しにするのも一つの選択肢などと発言したことに対し、ネタニヤフはこのエリヤフの閣議出席を認めないとしつつも、罷免していない。そういう中でイランが核抑止力を持とうとするのは理解しがたいことではない。

 ガザ戦争については、論議すべき点は多くあるが、イランの直接の戦争参加はないとの前提で物事を考えて良いのではないかと思われる。

「特集:中東動乱 イスラエル・ハマス衝突」の記事はこちら
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