同会議が23年の経済について指摘したのは、①需要不足と生産能力の過剰、②将来予測の弱さ、③潜在的リスクの存在、④国内大循環の目詰まり、⑤外部環境の複雑さと厳しさ、であった。前年の同会議で用いられていた「三重の(景気)下押し圧力」(①需要の収縮、②供給へのダメージ、③将来予測の弱さ)との表現は無くなったが、現状認識が大きく変わったわけではないことがわかる。
注目されるのは、今後の経済運営が基づくべき指針として「5つの堅持」(表1)が要求されたことである。翌年1年間の経済政策方針提示が本来の任務である同会議において、第5項目が示すような政治優先の方針が提示されたことには、違和感がある。
同会議に先立っての開催が予想されていた中国共産党の第3回中央委員会総会(3中全会)は開かれなかったが、党と国務院のトップ層では、中期的な経済政策の基本方針について議論されており、その一端が示されたと理解すべきなのかもしれない。
マクロ経済政策の方向性
会議が示したマクロ経済政策の方向性(中国語「総体要求」)においては、「5つの堅持」を踏まえて、政策の根幹をなす財政政策と金融政策の調整が示唆されている。このうち前者については積極的財政策が継続されるが「適度に」力を加え、「質と効果を高める」とされており、23年10月の1兆元国債増発にさらに追加国債が発行される可能性があり、また、バラマキでない効率的な財政支援がめざされる。
後者については、穏健な金融政策の継続とその「柔軟・適度」で「精確・有効」な実施が掲げられ、マネーサプライ・社会資金調達規模の伸びを「経済成長と物価水準の予期目標」と釣り合わせるとしている。従来は「名目成長率」と釣り合わせるとされていた基準に物価が加えられた格好である。
また、「ハイレベルでの科学技術自立自強」が初めて盛り込まれたことが注目される。これは次項で見るように、現代化産業システム建設を目指す施策につながるものである。