2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年1月5日

大きな政策転換は期待薄

 会議では、具体的な24年の重点政策9分野が挙げられた。表2に整理して示す。

 重点政策分野においては、科学技術イノベーションに依拠した現代化産業システム構築が第1、国内需要拡大は第2とされ、第3に民営企業支援が再確認されている。確かに産業システム構築は重要であるが、中長期的な目標であり、需要不足という当面の課題が二の次とされていることは疑問である。また、景気好転に向けて必須である企業家の将来予測の改善という点でも、民営企業支援が国有企業と並列的に扱われているのは従来と変わらず、これで民営企業の懸念が払拭されるとは思えない。

 需要喚起策としては、先に触れたように国債増発があり得るし、金融政策も機動的に運用されるであろうが、施策の効果には限界がある。本格的な政策論議は24年春の全国人民代表大会、さらにはいずれ開催される3中全会に持ち越された格好で、それまでは大きな政策転換はないであろう。

 政策転換に時間を要する現状が不変とすれば、23年に5%目標を達成した後は緩やかに成長率は低下するであろう。国際通貨基金(IMF)、世界銀行、アジア開発銀行などは24年の成長率を4.2~4.6%と予想している。筆者は、少子高齢化(労働人口減少)、都市化の減速、国有企業の業績悪化、等の構造的要因が表面化してくることから、2020年代後半~30年の成長率は4%台から3%台へと減速していくとみている。

懸念される経済安全重視の突出

 最後に注目しておきたいのは、経済安全重視の議論が突出しつつあることである。国家安全部が経済工作会議閉会後早々に自らのWeChat(中国のSNS)アカウントで行った解説がその代表例である。

 同解説は「経済安全は国家安全の基礎」との認識の下、「外部の挑戦に対応しなければならない」とし、中国経済を悪く言う言説に対して警戒を呼びかけた。経済に関する言説の場合、客観的数字を使いながら中国経済の苦境の実態を説明することさえ強い圧力を受ける可能性が示唆されている。

 ビジネスに絡んで発信される経済分析や、言説が取り締まり対象になるなら、企業は萎縮し、発展の芽はつまれてしまう。中国の政策当局者がこの点を認識するよう期待したい。

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