2024年12月19日(木)

教養としての中東情勢

2024年1月23日

苦慮するバイデン

 サウジやUAEが自らの石油輸出に悪影響の出るフーシ派の船舶攻撃を苦々しく思いながらも黙認しているのは、せっかくのフーシ派との和平協議を崩壊させないためだ。フーシ派はその足元を見て攻撃を仕掛け、さらには米国の対応の限界を見切っているフシがある。

 米紙によると、バイデン政権はこのほどホワイトハウスでフーシ派の対応策を探る緊急安保会議を開催し、フーシ派をテロ組織に再指名することを決定したが、対応に苦慮しているのが実態だ。米中央軍はこれまでフーシ派のミサイル基地など約30カ所を、150発を超える精密誘導弾で攻撃した。しかし、米紙によると、フーシ派の軍事力の2割程度しか破壊できていない。

 指導者のフーシは「米国やイスラエルとの直接衝突の機会を与えてくれた神に感謝したい」と船舶攻撃を続けると表明した。攻撃を完全にやめさせるには本格的な軍事介入しかないが、イラクやアフガニスタンでの失敗があり、米国にイエメンに地上部隊を派遣する余裕も計画もない。

 しかし、世界の海上貿易の12%が通過する大動脈である紅海が航行不能の状態を続けるわけにはいかない。大手のコンテナ輸送会社がこぞって紅海の航行をストップ、喜望峰回りに変更し、世界経済に影響が出始めている。イスラエルの貿易港エイラートの港湾活動は休業状態という。

 大統領選挙の劣勢が伝えられるバイデン大統領はガザ戦争を停止させることができず、ウクライナ戦争でもロシアの攻勢に対応し切れていない。加えてフーシ派の船舶攻撃を阻止する有効な手立ても見つけられないでいる。

 同派の後ろ盾であるイランは最近、パキスタンにまでミサイル攻撃し、戦力を米国やイスラエルに誇示した。バイデン氏はまさに正念場に立たされた格好だ。

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