国際金融危機に対する中国政府の対応は素早かった。昨年11月に4兆元(約56兆円)の公共投資計画を発表し、大幅な金融緩和を実施した後には、消費刺激策が続いている。
中でも注目されるのは、農民の消費意欲を引き出そうとする施策である。「家電下郷」政策では、農民の白物家電(カラーTV、冷蔵庫、洗濯機、携帯電話)購入に対して、購入額の13%が現金補助される。
もともと農村振興策の一環だったが、金融危機到来で景気対策の色彩が強まり、今後4年間の販売額は1.6兆元(22.4兆円)と予想されている。
また、3月から始まった「汽車(自動車)下郷」政策では、農村需要の多い軽トラック、軽自動車などについて、オート三輪などからの買い替え購入に対し購入額の10%(単価5万元以上の場合は一律5000元)の財政補助が出る。こちらは両者合わせて100万台の新規需要を見込む。
「家電下郷」では上限価格が設定されていることから、対象となっているのは中国国内メーカーの製品がほとんどで、日本など外資メーカーの商品は少ない。「汽車下郷」も、中国地場メーカーが得意とする小型車が対象だ。輸出急減で苦しむ国内メーカーの救済という色彩が強い。
日系メーカーをはじめとする外資メーカーが、刺激策の恩恵にあずかろうと低価格帯に参入し、価格競争が一層激しくなって淘汰が一気に進むのか。はたまた、外資メーカーは参入を控え、国家による保護で中国メーカーの技術力が長期的に蝕まれることとなるのか――。中国の選別的な内需刺激策がもたらす影響に世界が注目している。
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