これに対して、ガザ戦争は、イスラエルが包摂派ネットワークに参加できるのか否かを含めて収束の展望が見えず、イランの代理勢力の対米攻撃が続けば紛争拡大の危険もある。ポスト「冷戦後」時代を通じて解決の見通しのない紛争として続く可能性がある。
包摂派勝利のシナリオは、論説末尾にフリードマンが記したようにイスラエルが二国家解決に再度コミットし、パレスチナ暫定政府が再編され当事者能力を回復することであろうが、そのためにはネタニヤフの退陣とハマスが前面から身を引くことが必要で、これらは容易ではなくまたいずれにせよ時間がかかろう。
中国が第3のネットワークとなる可能性
また、フリードマンは、中国とグローバル・サウスは、抵抗派と包摂派の双方とつながりを持っている旨記しているが、2つのネットワークのいずれにも属さないという共通点で結びつく第3のネットワークを構成する可能性もあるのではなかろうか。また、万が一台湾有事とでもなれば、東アジアに中国をリーダーとする抵抗派ネットワークが生まれることになるであろう。
台湾有事は何としても避けなければならない事態であるが、進行中のいずれの紛争についても、いずれかのネットワークが明確な勝利を収めることは難しいのではないか。結局、長期にわたり現在の不安定な状況が継続することが常態となることがポスト「冷戦後」時代の特徴となってしまうようにも思える。