2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年1月29日

 1月8日付けフィナンシャル・タイムズ紙に掲載された同紙チーフ外交コメンテーターギデオン・ラックマンによる論説‘Why I still believe in America’(なぜまだアメリカを信じるのか)が、トランプの再登場は米国が幾度となく経験してきた自己修正の過程の一つであり、たった4年で種々の力と富の源泉からなる米国の民主主義は崩壊しない、と論じている。要旨は以下の通り。

(rarrarorro/gettyimages)

 ドナルド・トランプが共和党候補としてだけでなく大統領候補としても最有力であるにもかかわらず、「私はアメリカを信じている」との言葉が私の頭の中にある。

 有権者が前大統領選結果を覆そうとしたとして裁判されている人物を大統領に選ぼうとしている時に、なぜ米国に信頼を置き続けられるのか。

 歴史上全ての超大国のように、米国は酷いことをしてきたが、2つの世界大戦と冷戦という前世紀の3つの世界的対立では常に正しい側にいた。米国は民主主義が権威主義国家に勝利する上で決定的要素だった。

 過去80年間米国は、民主主義実現と防衛の双方で、自由世界の真の指導者だった。もし米国の民主主義が崩壊すれば、世界の自由民主主義が危機に瀕する。世界最裕福・最強国家が民主主義の同胞であることは、われわれを安心させる。

 トランプ第二期政権では、この安心感が消えるかもしれない。トランプは、民主主義の最も基本的な手続である自由選挙への敬意が全く無い。彼の報復は政敵を提訴する脅迫を含んでいる。これでは権威主義国そのものだ。

 それでは、なぜ私は米国を信じ続けられるのか? 第一に、まだ何も決まっていない。11月まで数カ月ある。

 第二に、米国が偉大で世界的指導力があった時代でも常に混乱とメロドラマがあったが、米国は常に最後は自己修正し再生してきた。米国人が熱狂するトランプを含むメロドラマは、病的だがエネルギーの表れでもある。米国は反乱と反権力の国で、事態を刺激し常に自分を作り変えている。

 トランプへの投票は、人々が基本的変化を求めていることの印で、彼の登場は、現状維持拒否の印だ。トランプの人気が衰えないことは、エリートの自己チェックを漸く促している。

 平等を経済政策の中心に据え直そうとするバイデンの努力は、その一例だ。社会的不公正対処への反発もそうだ。あるバイデン補佐官は、多くの人々が米国内左派を恐れていることに気付いた、と言う。トランプの左派への復讐は米国を新しい方向に導くかもしれない。しかし私は米国を信じており、トランプ政権二期目だけでは米国の民主主義を崩壊させるに不十分だと思う。

 米国は巨大で複雑で、多くの異なる力と富の源泉を持っている。トランプと取り巻きは4年で全てを跪かせることはできない。私は引き続きアメリカを信じる。 

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