2024年11月25日(月)

バイデンのアメリカ

2024年2月20日

 さらに、先月25日、米商務省が発表したところによると、23年10~12月期の実質国内総生産(GDP)速報値も、前期比の年率換算で3.3%増となり、直前の市場予想(2%)を大きく上回った。市場は「懸念されていた景気後退のリスクが減退した」として好感、株価上昇基調が続いている。

経済界へのダメージが前政権以上か

 その一方で財界では、「トランプ再選」が経済全体に及ぼす影響について「第一次政権時より悪くなる」として警戒感が広がりつつある。

 英誌「Economist」によると、米経済界の最高経営責任者(CEO)たちは、17年トランプ政権誕生後の一時期こそ、気前のいい個人および法人所得減税の恩恵を受けた見返りに、環境保護規制撤廃など超法規的諸政策を寛大に受け止めてきた。しかし、トランプ氏が20年大統領選挙敗北後も、選挙結果転覆のための米議会乱入・占拠事件教唆など民主主義蹂躙の暴挙に出るに及んで愛想をつかした。

 大企業の代表組織「Business RoundTable」CEOたちが大統領を電話に呼び出し「カオスの早急な収拾」を直接促したほどだった。同時に名だたる多くの企業も、トランプ氏に同調し選挙結果の認証を拒否した共和党下院議員たち147人に対する政治献金一斉停止措置に踏み切った。

 その意味で財界が今回も、トランプ候補の11月本選に向けた動きに神経をとがらせつつあることは言うまでもない。

 トランプ前政権当時の経済・貿易政策については、「アメリカ・ファースト」主義に基づく輸入課徴金措置などにより、任期中の4年間で24万5000人もの雇用が失われたことが、「米中ビジネス協議会」(US-China Business Council)2021年調査で判明するなど、場当たり的なアプローチが米経済界の頭痛の種となってきた。

 それでも、当時はまだ、暴走にブレーキをかける常識派が政権内に少なからず居たことで、〝惨事〟だけは回避できたとされる。

 ところが、大手企業のCEOたちの間では、もし「第2次トランプ政権」が誕生した場合、経済界へのダメージは前回以上に甚大なものになりかねないとの見方が広がっている。

 今回は、前政権当時と異なり、トランプ取り巻き政策集団が保守的シンクタンク「ヘリテージ財団」に代表される「Make America Great Again=略称MAGA」(再び偉大なアメリカを)運動の熱烈信奉者たちでほぼ完全に固められており、貿易・経済面でより過激な政策が打ち出されるとみられているからにほかならない。

米財界が持つ4つの懸念

 まず最大の懸念材料として挙げられているのが、貿易戦争の勃発だ。

 トランプ氏は出馬表明以来、国内産業保護を目的とした「あらゆる輸入品に対する一律10%課税」を公言してきた。自らも「Tariff Man(課税男)」と呼んではばからない。

 しかし、大統領就任後に実際に一律課税が実施された場合、日本含め各国も対抗上、米国製品への新たな課税措置を余儀なくされる。トランプ氏は「そうなったら、さらにそれ以上の追加課税をする」と豪語しており、際限のない貿易戦争に一気に拡大しかねない。

 加えて、ワシントン・ポスト紙報道によると、トランプ氏は、中国からの輸入品に対し「一律60%関税」を検討中といわれ、米経済界に衝撃が走っている。

 中国からの輸入総額は昨年の場合、年間5370億ドルに達しているが、輸入品目の大半が工業関連製品や資本財で占められているだけに、もし、高関税が課せられた場合、米国メーカーへの甚大な打撃は避けられないからだ。また、コスト上昇分の価格転嫁により、諸物価高騰を招くことも必至だ。

 さらに懸念されるのが、こうした対中〝スーパー関税〟により半導体、IT関連部品などのサプライチェーンがズタズタになるだけでなく、対中ビジネス・チャンスを日欧諸国のメーカーや商社に明け渡し、米経済に深刻なダメージになることだ。


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