2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年2月14日

 フィナンシャルタイムズ紙のフォルーハー副編集長が、1月15日付の論説‘America needs straight talk on trade’で、日鉄のUSスチール買収について慎重に検討すべき課題もある、問題はバイデン政権の貿易経済政策が不明確なことにある、経済につき同盟国ともっと率直な話をすべきだ、と述べている。主要点は、次の通り。

(VectorInspiration/gettyimages・dvids)

 バイデンの貿易政策は、米国の労働者と米国の同盟国との狭間で正念場を迎える。大統領経済顧問のレイエル・ブレイナードは、日本製鉄によるUSスチール買収合意につき、「大統領はこの買収は国家安全保障と供給網の信頼性への潜在的な影響につき真剣な検討が必要であると考えている」と述べた。

 自由貿易は補助金や国家安全保障上の利害がない平等な競争を前提とし、国家主導経済はそれとは全く反対の前提に立つ。日本は、中国と異なり国家が経済を運営する国ではない。しかし、この買収は規制当局(米外国投資委)に幾つかの課題を提起する。

 日本は同盟国だが、日鉄の子会社は、多くの同盟国企業と同様に中国で事業をしている。米国の戦略的な分野でビジネスを行うために、同盟国は中国との事業に当たりどれだけ米国の国内政策に従う必要があるのかという問題がある。

 さらに日本は自由市場経済だが、企業の間には相互の株式所有や取引上の系列システムがある(国内企業優遇の傾向も)。これが問題になり得る。

 今の米政権は、貿易拡大法第232条の規定に基づき、長期的に国内の鉄鋼生産増大を約束している。アジアの多国籍企業がそれを本当に約束できるか。大自然災害や戦争により世界の供給網が崩壊した時、日鉄のUSスチールは、日米のどちらを優先するのか。

 これらの問題はもちろん、合併が承認される場合には法的な合意によりうまく処理されるだろう。しかし、もっと深い問題がある。


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