2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年2月14日

 バイデン政権の貿易政策は、一体何なのか。それは、トランプ復帰政権の政策と如何に違うのか。同盟国はそれを知りたい。

 同盟国は、この点につき米国の説明がまちまちだと感じている。フレンド・ショアリングには、日本も含まれているはずだ。鉄鋼などの戦略的産業は、違うのか。あるいは、労働組合の結成を約束し、中国での事業を持たないことを約束すれば、承認されるのか。

 なぜ、それがいまだ不明確なのか。一因は、政府関係者によりデカップリングの説明が違うことにある。

 通商や安全保障分野の一部の者は、中国に対抗するために同盟国との間で新しい貿易協定を結びたい。他方、米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ等は、労働と環境に係る共通アプローチに基づく「ポストコロニアル」な貿易パラダイムを主張する。彼女達は、今の市場システムはこれらの問題を優先せず、世界貿易機関(WTO)等の機関はそれらの追求のために作られていない、と考えている。

 政権内のポストネオリベラリスト達の主張には一理あるが、説明が不十分だ。バイデン政権は、自分達の政策を明確にする必要がある。

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買収成立へ越えなければいけないハードル

 日本製鉄は12月18日、USスチールを買収すると発表。米の鉄鋼メーカーとの競争に勝ちUSスチールと合意した。USスチールは企業利益になると判断したのであろうし、米経済や日米経済関係に貢献するものと思われる(保護主義より余程良い)。

 本件は今後、海外投資委の審査、株主の承認や労組との交渉という関門がある。USW(全米鉄鋼労組。大統領選でのバイデン支持を表明)、民主・共和両党の議員らから反対の声が上がっている。

 トランプ政権の元 USTR ライトハイザーは、既にこの買収に反対している。今彼は、左派や労働組合に受けるような論点を編み出そうとしている。さらに、トランプは2月5日、この買収を「阻止する」と述べた。

 フォルーハーはこの記事で、日鉄による買収とバイデン政権の貿易政策につき議論する。前者については、①米海外投資委の審査では、日鉄の在中国子会社の事業への米の規制の在り方や日本企業特有の系列システムと緊急時の供給確保(日米のどちらを優先するのか)等が問題になりうる、②同盟国の企業が米国の戦略的分野でビジネスを行う際に「どれだけ米国の国内政策に従わねばならないか」が議論になる等と指摘する。彼女の立場は、必ずしも明確でないが、基本的には開かれた貿易経済を支持するも安全保障や環境、労働には配慮すべきということだろう。


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