北朝鮮は、地政学的状況を利用している。米中対立やロシアのウクライナ侵攻により、中国、ロシアとの協力が増大した。今や北朝鮮は挑発行動をとっても制裁を受ける度合いは少なくなり、自由にミサイルの数や質を上げている。
1月6日、北朝鮮は延坪島に近い韓国の海域に200発以上の砲弾を発射した。もし延坪島で住民や軍人が死亡していたなら、尹錫悦大統領は報復砲撃や空爆を命じていたかもしれない。
金正恩は合理的なアクターであり、米国との核戦争には勝てないことを理解している。金正恩は恐らく戦争は望んでいないだろうが、彼が誤算する可能性もある。偶発紛争防止のため、北朝鮮との意思疎通チャンネル確立が重要だ。
日米韓の協力促進が重要である。情報共有やミサイル防衛、共同演習の増加等である。戦争は不可避ではなく、北朝鮮を抑止できる。北朝鮮に決意と強さを見せる時だ。
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変わらない朝鮮半島で戦争が起きるリスク
昨年12月、金正恩は中央委員会で演説し、米国等に「強硬政策を実施する」と強調し、韓国との関係を統一の対象ではなく敵対的かつ戦争中にある国家間の関係へと転換すると述べた。今年1月15日には、最高人民会議で演説し、①「大韓民国を第1の敵対国、不変の主敵」とみなし、戦争の時には韓国を完全に占領し、北朝鮮の領域に編入するよう憲法の改正を指示し、②祖国平和統一委員会(韓国との窓口機関)や民族経済協力局、金剛山国際観光局を廃止すると決定した。
これらを如何に理解するか。1月11日、二人の専門家、カーリンとヘッカーは、金正恩は戦争に踏み切る戦略的決断をしたとの見方を示した。それは世界の専門家の議論を触発した。
今のところ、大勢はカーリンとヘッカーの見解に同意してはいない。テリーのこの論文も、彼らの見解には批判的である。
「証拠を提示していない」、「金正恩は合理的なアクター」などと言う。表題からして過剰反応は危険だと言う。しかし双方の意見には、共通する要素も多い。