米国・ホワイトハウスが10月13日、北朝鮮によるコンテナ1000個分の対ロシア軍事物資が遠く離れたウクライナと目と鼻の先にあるロシア西部に到着したと発表した。エストニア軍情報機関のトップも北朝鮮がロシアに約30万発の弾薬を提供したと発言し、韓国国家情報院は「北朝鮮が8月からロシアの船舶などを利用して砲弾など各種武器を10回以上輸送した。北朝鮮からロシアに持ち出された砲弾は100万発以上」と具体的に明らかにした。今年9月13日に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記がロシアを訪問し、プーチン大統領との会談を境に北朝鮮の対露軍事支援が具体化したことが明らかとなった。
北朝鮮による対露支援が明るみに出たのとほぼ同時期に、韓国・ソウル近郊の城南(ソンナム)市にあるソウル空港(空軍基地)では、同国最大規模の防衛産業展示会(隔年開催)である「Seoul ADEX(ソウル航空宇宙および防衛産業展)2023」が開催された。6日間の期間中に約22万人の来場者が訪れ、35の国と地域の550社が参加し、1億2800万ドルの契約が結ばれたとされる(「「ソウルADEX」で294億ドルの受注商談 22万人来場」『聯合ニュース(日本語版)』2023年10月23日)。
ロシアによるウクライナ侵攻以後、西側自由主義諸国の中で韓国防衛産業の存在感は高まるばかりだ。もはや世界はロシアによるウクライナ侵攻後、朝鮮半島が東西陣営の武器庫としての存在感をいかんなく発揮している現実を受け入れざるを得ないだろう。
南北間での新しい軍事技術をめぐる競い
過去10年間を振り返ると、われわれは北朝鮮による核実験(2013年・16年1月・9月、17年9月)とさまざまな種類の弾道ミサイル発射といった核とミサイルの技術的進展に目を奪われてきた。その一方で、韓国でどのような軍事的技術の進展があったかどうかについてはあまり注目されてこなかった。
この間、韓国軍の能力増強策の中で注目すべきは、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)と潜水艦からSLBMを発射するための垂直発射装置(VLS)、そしてこれらを装備として兼ね備える新型潜水艦である。16年8月に北朝鮮がSLBM(北極星1号)の発射に成功すると、韓国国防部は水面下で韓国もSLBM開発を進めていたと明らかにした。
VLSを搭載した潜水艦「島山安昌浩(トサンアンチャンホ)」は18年9月に就役。21年9月に同艦からのSLBM発射に成功したことで開発完了が宣言された。SLBM発射に必要なVLSのために必要なコールド・ローンチ技術はロシア由来であることが知られている。