2024年5月17日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年2月29日

 北朝鮮の挑発に対する報復が戦争を起こすリスクはある。しかし2010年の哨戒艇チョナンの沈没や延坪島への砲撃の時には、それまでも常にそうであったように、韓国が報復を主張し、最後は米国がそれを抑えた。

 そのパターンは今後も変わらないだろう。抑止の強化と報復の制御が重要な政策になる。

金正恩が韓国を独立国とする狙い

 テリーは、金正恩の変化の理由につき、三つを上げる。しかし第4の可能性があるのではないか。

 金正恩が今や韓国を一つの独立国として扱うことがより現実に近いし、その方が北朝鮮の外交の自由度を高めると考えた可能性である。金正恩は、今までの南北関係のしがらみを捨て、フリーハンドを手に入れ、北朝鮮の利益を最大化するために自ら他国との連携や対立を操舵しようとしているのではないか。

 昨年9月以降の自分の動きを見て、今、金正恩は自信を深めているだろう。テリーは、今や北朝鮮は新たな国連制裁やその強化は心配しなくても良くなったなどと指摘する。ウクライナ戦争とロシアの孤立は、朝露関係に戦略的転機をもたらし、南北関係をも変質しようとしている。

 金正恩の大変化は、韓国の革新勢力の国内基盤を大きく損なう可能性がある。祖国統一委員会の廃止も大きい。保革両極化の韓国国内政治を変えるかもしれない。

 米朝、日韓、日朝にも影響するだろう。非核化は依然として大問題である。他方で、プーチンが金正恩を使って極東で問題を起こす可能性もある。中朝関係も要注意である。

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