そして、多くの企業が本格的に総合職、つまり管理職候補生として女性を採用し始め、それが定着したのは、それこそ政府が「女性活用」を強く打ち出した03年以降である。流通や情報が先行し、これに金融や商社や追随したが、メーカーに関してはまだ十分でない産業もある。そんな中では、いつになっても「女性管理職30%」というのは達成できない。
とにかく徹底した実力主義に基づいて、ダイナミックな抜擢人事を行わねば本物の女性活躍というのは実現しない。その際に弊害となるのが年功序列の考え方であり、これも過去のものとして決別すべきだ。
それは単に女性管理職を抜擢するためだけではない。産休制度、育休制度を正しく運用するにも、年功序列の考え方では弊害が大きすぎる。
例えば、入社6年目の社員が産休とそれに続く育休で2年半ほど休職したとする。厳密に年功序列を運用し、1年でも先輩というカルチャーを残している企業では、入社年次の序列は休職期間が「停止」という運用だ。
そうなると、6年目の社員が2年半後に復職すると、6年目か7年目の社員として位置づけられる。一方で、自分より1年後輩であった5年目の社員は同じ2年半後には8年目となっている。つまり上下関係が逆転することになり、休職前の後輩が今度は指示をする側に回る。これでは復職者のモチベーションは下がるし、後輩の側もやりにくい。
産休・育休・時短を「我慢期間」にしてはいけない
この問題は産休制度が普及し始めた90年代からあり、多くの場合は「元の先輩後輩関係」がそのまま復帰後に逆転しないように、復帰してきた人材を別の部署に回すなどの人事が一般的となっている。多くの場合は、これに産休・育休復帰者は時短勤務を利用することが多く、企業としては完全に「一軍の控え選手」どころか「二軍」扱いになってしまう。
昭和の時とは違い、現在の現場では中堅社員の給与水準は「夫婦の一方が働く」ことで家計を回せるようにはなっていない。したがって、産休・育休を取得した女性もよほどのことがない限りは離職しなくなった。
けれども、現状では、産休・育休に続く時短の時期を経て、子供が成長して「残業や出張ができる」ようになるまでは、ジッと我慢をして「大きく遠回り」をする。40代になって改めて実力を発揮して子育て経験のない同僚に追いついていくというパターンになっている。
この問題を解決するには、まず徹底した実力主義が必要だ。産休・育休・時短期間を経て復帰したとして、「長い間会社に迷惑をかけていた」のだから、「その間はフルに働いていた単身者など」よりは出世レースで遅れをとっても仕方がない、本人もそのように諦めて、周囲もそれで全体が収まると思っているケースが多いようだ。だが、これでは優秀な人材が埋もれてしまう。