Z世代によって変わるアメリカ、 日本はどうする?
「今年11月はアメリカの大統領選挙です。本書によれば、1980年に大統領選でレーガンが中絶反対を打ち出して以来、中絶問題が民主党と共和党の党派対立の一大要因になってきたとか。今年の大統領選でも大きな争点になるのでしょうか?」(足立)
2022年、それまで長く人工妊娠中絶の権利を保障してきたロー対ウェイド判決が、覆った。トランプ政権下で最高裁の保守派判事が多数派になった結果だが、ロー判決破棄後、保守的な州が次々と州内での妊娠中絶を禁止している。
もっとも、ギャラップ調査によると、Z世代の中絶合法派は48%を占め、中絶違法派の11%を大きく凌駕している。
アメリカは先進国で唯一、国民健康保険制度のない国である。妊婦死亡率も、先進国の中で例外的に高い。そうした環境下での妊娠中絶は、「女性が自分の運命を自分で決める権利」だと三牧さんは見る。
「しかし、中絶の是非は、今回大きな争点にはならないかもしれませんね。
経済と移民はしかし、現在のバイデン政権にとって有利な問題とは言えない。
移民流入の阻止は対立候補トランプの看板政策であるし、ウクライナ戦争などが絡む諸物価の高騰は簡単には収束せず、支持層だったマイノリティなどの支持を遠ざけてきた。
「Z世代が圧倒的に民主党支持、
「見通せないところがあります。ここ数カ月の世論調査では、Z世代のトランプ支持とバイデン支持は拮抗しており、トランプが上回ったこともありました。価値観が近いのはバイデンでも、むしろそうだからこそ、その改革の中途半端さに苛立つ面もあるのでしょう。ただ、国民皆保険や銃規制、人種差別禁止など、バーニー・サンダース流の改革思想を受け継ぐ彼らが前面に出れば、アメリカは変わるはず、変わってほしいと私は願っています。期待半分ですね」(三牧)
今年の大統領選では、Z世代とその上のミレニアル世代(1980年頃~90年代半ば生まれ)で、全有権者数のほぼ半数になる。
「日本のZ世代もアメリカ同様に不況下で育ち、日本の豊かな時代を知りません。脱ゆとり世代、スマホ世代と呼ばれ、現実的で社会的問題意識は高い。けれどもアメリカのZ世代と違い、行動には出ませんね?」(足立)
「日本はアメリカと比べ、社会の多様性が乏しいですし、人口も減りつつあります。だから同列に比較はできないのですが、気になるのは社会を変えようとする人への姿勢です。セクハラを告発した女性の元自衛官は、日本ではバッシングを受け続けましたが、アメリカではその勇気を称賛されました」(三牧)
日本の一番の同盟国アメリカがZ世代によって変わって行くとすれば、日本はどう対応するのか? それは日本にとって、全世代的な課題でもある。