2024年6月29日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月16日

 4月14日の(イランの)攻撃に対して米国、欧州、アラブ諸国の軍が協力したことは、米国とのパートナーシップの潜在的な価値を示したが、GCC諸国がイラン絡みの攻撃に晒されているにも関わらずGCC諸国とより正式な安全保障条約を結ぶことに対して何年もの間、米国がきちんと対応して来なかったことで、GCC諸国は米国のためにイランの砲火を浴びることを躊躇している。

 CIAの元対テロ・ユニット長は、何カ月もの米国とフーシー派の手詰まり状況の後、4月14日の攻撃は中東でイランが米国と対等な勢力となることに近づいていることを示しており、米国がイランの軍事力を破壊しようとしても成功しないリスクがある、「そのことは域内の米国の同盟国によって認識されることとなろう」と述べている。

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ネタニヤフの狙いと誤算

 まず、イスラエルとイランの報復の応酬だが、4月19日にイスラエルが限定的な報復を行い、イラン側が自重する姿勢を見せたことから、今回の衝突は終息する可能性が高まっている。しかし、イスラエルがイランの核開発を自国に対する脅威と見なしている限り、今後もイスラエルとイランの小競り合いは続くことになろう。

 今回は辛うじて免れたが不測の事態が起きるリスクは無くならない。しかも、これまでの両国の応酬は核科学者の暗殺など非公然のものだったが、今回の出来事で公然化してしまい、より大規模な不測の事態が起きる可能性が高まった可能性がある。

 さらに、今回の緊張の直接のきっかけとなったのはイスラエルがイラン大使館を空爆してヒズボラとの連絡役の革命防衛隊高官を暗殺したことだが、これは明らかにやり過ぎの挑発で、ネタニヤフ首相の個人的な事情が絡んでいると考えられる。つまり、辞任すると汚職問題で収監される恐れのあるネタニヤフ首相が、危機的状況を続けるため、政権維持のためのラファへの侵攻作戦が米国の反対で行き詰まっている中、イランとヒズボラを挑発してヒズボラからの報復を促し、ヒズボラの脅威を口実にレバノン侵攻作戦を画策したのではないか。

 しかし、イランはネタニヤフの意図を読んで敢えてヒズボラを使わず、イラン本国からドローンと弾道ミサイルで攻撃したものと思われ、これはネタニヤフ首相にとり大きな誤算だったと想像される。保身のため危機を続けなければならないネタニヤフ首相は、再びガザ正面での紛争拡大を狙うであろう。


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