2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月16日

 今回、イランがイスラエルの報復に自重したのは、ガザ情勢を巡って関係に亀裂が入っていると思っていた米国が全面的にイスラエルを支援し、米軍との衝突のリスクが高まった事。イスラエルが領空外から核施設の防空システムを攻撃する能力がある事で肝を冷やしたからであろう。

高まるイラン核開発の脅威

 今回の危機は、これで収拾に向かうとみられるが、ガザの衝突に国際社会が気を取られている間にイランの核開発は進んでおり、早晩、放置できない段階に至るであろう。その時に本当の中東の危機が始まる。

 GCC諸国はイスラエルとその後ろ盾の米国とイランの間の軋轢に巻き込まれたくないが、これまでは米国の安全保障上の傘を信じて、イランと対立的な関係を維持してきた。しかし、米国の中東からアジアへの米軍の再展開が進む中、米国の安全保障の傘は閉じられようとしたので彼等は動揺してイランとの関係改善、自国の軍備の増強、ロシアや中国との関係強化に走り出していた。しかし、昨年の10月以来のガザの衝突により、当面、米軍が中東から撤退するのは困難となった。

 米軍の再配置は、日本の安全保障にとっても無関係ではない。米軍が全世界的にアジアに再展開しようとしたのは、台頭する中国の脅威に対抗するためであるが、ウクライナ問題、そしてガザ紛争で米軍のアジアへの再展開は困難になっている。日本、韓国、台湾の自助努力がより求められるであろう。

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