2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月17日

 頼清徳自身は蔡英文現総統の対米、対中路線を踏襲することを明確にしている。頼清徳はかつて自らの役割を「台湾独立のために仕事をする人間」と位置付けたことがあるが、その後、蔡英文政権下で副総統の役割を果たす過程で「台湾独立」のスローガンを封印した。

 そして、台湾はすでに主権の確立した国(敢えて、名づけるとすれば「中華民国(台湾)」)であり、自由と民主主義体制を堅持しつつ、対等な立場で中国と話し合いを行う、というものである。

 このような台湾の基本姿勢を堅持しつつ、台湾海峡の平和と安全を維持するという立場は米国の対台湾、対中姿勢に合致している。

 振り返れば、陳水扁・民進党政権、馬英九・国民党政権それぞれの党派の違いによって台湾の対中姿勢には微妙な違いが存在した。そして、頼清徳・民進党政権は基本的に、現蔡英文・民進党政権の基本路線を踏襲しようとしている。米バイデン政権が頼清徳次期政権の姿勢を積極的に評価しようとしているという、上記ウォールストリート・ジャーナル紙の記述は間違ってはいない。

米国と中国の反応は?

 米国は国内法の「台湾関係法」(1979年)を維持しており、台湾の防衛上、必要とする武器を供給する義務を負っており、台湾海峡の平和維持に決定的な重要性を持っている。

 目下のウクライナやガザの危機を考えれば、台湾海峡で大きな波乱が起こることを米国としては懸念している、という上記解説記事の記述は決して誇張とは思えない。

 なお、中国から見れば、頼清徳次期政権は、蔡英文現政権同様に敵視すべき「台湾独立論者たち」であることに変わりはない。

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