オトナの教養 週末の一冊

2013年12月2日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 <透析を受けている人の10年生存率は、40%である。これに対して移植された人の10年生存率は、80%である。これは、誰が見ても移植が良いに決まっているが、その移植に必要な腎臓が足りないのが現状である。そこで、四国の宇和島徳洲会病院の万波誠医師は、小さなガンが発症している腎臓をガン切除後に、移植待ちの患者に移植した。>

 臓器移植学会やマスコミから批判の嵐にあったこの移植法について、著者は大勢に流されることなく、「万波医師はこれまで多くの手術を成功させ、病腎が移植された他人の体内でガンを発症した例も無い。少なくとも透析を受けなければならなかった人に、その必要がなくなったのである」と、冷静に論じている。

 海外では逆に高く評価されたことも紹介しつつ、「拙速な賛否は控えねばならないのかもしれないが、患者本人、またその家族の中には、移植を進めてほしいと思っている人も多いのではなかろうか」と述べる。

 客観的事実とともに、患者の立場を尊重するヒューマニティの観点からも、しっかりと自身の意見を述べる著者に、共感した。こんな先生に、生物学を習いたいものである。


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