テレビの推理番組で、こんなシーンがあった。警視庁の刑事2人が地方へ捜査に出かけた折、図書館で調べ物をする。若い女性刑事が、皮肉たっぷりにいう。
「わざわざ図書館に来なくても、インターネットというものがあるでしょう」。
熱心に本のページをめくりながら、先輩がいう。
『人体探求の歴史』
(笹山 雄一 著、築地書館)
(笹山 雄一 著、築地書館)
「本のほうが詳しいし、確かなんだよ」。
このセリフに、溜飲を下げたアナログ派は少なくないだろう。私も大きくうなずいた。
もちろん、いつでもどこでも調べ物ができるインターネットは、私たちの疑問を即座に解決してくれる重要な”電子図書館”である。
とはいえ、情報の深さや確かさにおいては、本に軍配が上がる、と私はいまだに考えている。とりわけ、著者と編集者の「人となり」が見えるような本は、確かな情報として安心して読めるところがいい。
本書も、そういった「人となり」が見える本のひとつである。
じっくり書いた“熱気”が伝わる本
インターネットで調べれば事足りる情報を寄せ集めた雑学本では、とはじめは高をくくっていたが、読んでみると、よいほうへ裏切られた。
目、松果体、耳、鼻、心臓、血液、骨、肝臓・・・・・・といった具合に、肛門、精巣、卵巣まで15章。医学の教科書や「家庭の医学」などとは異なる独自の章立てで、著者の好奇心のおもむくままに時間をかけて調べ、じっくり書いた“熱気”が伝わってくる。
著者は、北海道大学水産学部を卒業した理学博士。富山大学、金沢大学の理学部教授をへて、金沢大学環日本海域環境研究センター教授を務めた。現在は同センター連携研究員。「四十年ほど大学において、講義や実習に携わってきた」という。