2024年6月16日(日)

BBC News

2024年5月23日

ファイサル・イスラム経済編集長

私は今まで、経済統計と選挙の開始が組み合わせられて発表された例を知らなかった。しかしリシ・スーナク英首相は明らかに、22日に発表されたインフレ指標と、市場予想よりも力強く景気後退(リセッション)を脱却したことを背景に、解散総選挙に踏み切ったようだ。

4月のインフレ率は2.3%と、過去3年近くで最も低かった。この数値は予想外のものではない。インフレ率は、イングランド銀行(中銀)が目標とする水準にはまだ達していないものの、全般的には通常の水準に戻っている。

しかし、この数値には尾を引くものがあった。基本的なインフレ率、特にサービス部門のインフレ率は6%弱と、依然として高止まりしている。つまり、イングランド銀行が選挙戦の最中、次の金融政策決定会合が行われる6月20日に利下げを実施する可能性は、現在、むしろ低くなっていると考えられる。

しかし首相は明らかに、自分には国民に伝えるべき経済好転のストーリーが十分にあると、そして三重の価格ショックは和らぎ始めていると、考えていた。

これは選挙での経済に関する大きな賭けだ。まず、経済回復という賭けがあるが、これは22日に発表された経済指標に支えられている。次に、回復が国全体で幅広く感じられるかという賭けがある。そして最後に、国民がそれを保守党政権の功績と評価するかどうかもある。

スーナク氏の売り込みどころは、財務相、そして首相として、自分は3年間の世界的危機を乗り切り、雇用と法案に対する前例のない経済支援を行なったという点だろう。彼の率いる与党・保守党は、より効率的でデジタル化された公共サービスによって、より小さな国家と低税率を可能にする、韓国型のハイテク経済というビジョンを描こうとしている。

しかし、最大野党・労働党もまた、経済を盾に戦おうとしている。党首のサー・キア・スターマーとレイチェル・リーヴス影の財務相は、物価と住宅ローン金利の高騰の責任の一端は現政権にあり、いずれにせよ、家庭は景気の好転を実感していないと言うだろう。

また、リズ・トラス前首相が示し、英ポンドの急落を招いた「ミニ・バジェット」の余波をひたすら取り上げ、保守党の言う「経済の安定」とは、議会の1会期で3人の首相と4人の財務相が交代することだと言うだろう。そして、より多くのグリーン投資と住宅建設、鉄鋼コミュニティーへの公的資金を主張するだろう。

結局のところ保守党は、激動の三重ショックの最中に経済を運営し、プラス成長と正常なインフレ率に復帰させたことを評価されたいのだ。一方の労働党は、現政権下で起きたことを非難し、その責任を取らせたいのだ。

経済に関する議論が、この選挙戦を決定づけることになりそうだ。

しかし、それは未来よりも過去の経済に関するものかもしれない。

(英語記事 Calling an election on the economy is a risky gamble

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c3ggp28e7z2o


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