2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月11日

 どうして西側はこれほど不運なのか。この地域ではビジネスが難しいからだ。政府は弱体で、国境は不確定、市民社会は分断されている。加えて、地域のほとんど全ての者は植民地時代の宗主国であるフランスを憎んでいる。

 しかし、米国がアフリカを人権活動と民主主義振興の実験場にしてきたことも原因だ。最近までアフリカは米国ビジネスや安全保障部局にとり重要性が低かった。

 米国の投資は少なく、軍計画策定者にとりアフリカはインド太平洋他の地域に比べ重要性が低かった。アフリカ政策はNGO他の活動家のもので、米国国際開発庁(USAID)は不釣り合いな影響力を持ってきた。

 これは不幸だ。なぜなら、サヘルには民主主義の持続可能な振興の条件がほとんどないからだ。結果この地域での米国の活動は、不透明な民主主義と達成不可能な開発目標の追求に費やされてきた。

 悪い人権政策は非生産的のみならず残虐たり得る。この地域の問題の多くは2011年の西側のリビア内戦介入に遡る。この愚かな行動は、リビアに10年以上の悲惨な状況と戦争をもたらし、サヘルに多量の武器が流入しカダフィがテロリストに課していた制約を緩めた。

 西側外交官とNGOの30年の開発協力と民主主義振興と人権活動は、ワグネルの全盛を招いた。期待と計画とは異なる。

 バイデン政権はアフリカ政策を再考すべきだ。西側が過去の間違いから教訓を学ぶまでは、ワグネルの流入は続く。

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米国だけの問題ではない

 ウクライナ戦争を闘う中で、ニジェールで起こっていること(米仏の撤退とワグネルの浸透)は戦略的に重要だとのミードの視点には賛同できるが、対応ぶりについては、若干意見がある。

 まず、アフリカ問題への対処は第一義的には米国ではなく欧州がやるべきだろう。米国が能力的には引き続き世界唯一最大の超大国であるにも関わらず、問題解決への対処・関与の意思が急速に減退している現状を考えれば益々そうである。

 米国は限られた「やる気」の使い先について優先順位をつけながら考えていくべきだが、アフリカの優先順位は高くないだろう。

 先の岸田文雄首相の訪米の際の議会演説でのメッセージの通り、米国には引き続き戦後米国が主導してきた世界的秩序維持のために働くことが望まれる。しかし、米国はそれを一人でやる必要はなく、インド太平洋であれば、日本・豪州・韓国他の同盟国が支援するし、アフリカであれば、北大西洋条約機構(NATO)のパートナーである欧州諸国が支援すべきで、米国はそれを欧州に要求する正当な権利があるはずだ。


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