2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月11日

 旧宗主国の人気がないというのはよく理解できる。しかし、NATOは東(ロシア)と南(アフリカ難民・テロ問題)の両方に対処することになっているのであり、今は東が中心であるとしても、南をいつまでも疎かには出来ない。

 さらに言えば、NATOではなく、欧州連合(EU)をベースとした欧州の安全保障協力は進んできている。旧宗主国が表に立つことなく、欧州としての共同対処軍を作ることは出来るはずだ。

制裁ではなく、支援を

 第二に、まさにミードが指摘するように、優先目的とアプローチを変える必要があるのではないか。民主的に選ばれた政府が弱体で、国民に対して基礎的なサービスさえ提供できないようであれば、クーデターが起こるのは止めようがない。

 換言すれば、現在世界を見渡せば、「民主主義を装う権威主義」は数多く存在している。ロシアの例を見るまでもなく、いわゆる「選挙独裁」は世界に蔓延しているのだ。

 そのような中で、選挙により民主的に選出された指導者云々と言っても空虚に聞こえるだけだ。まず、クーデターが発生した場合には、民主化への工程表を示さなければ、その国に対する安全保障面での支援が出来なくなる、という米国の法制度は変える必要がある。

 クーデターが起こるような脆弱な政府のある国に対してこそ、民生のための支援は強化すべきなのだ。次に、悪いことをやったら制裁するという考え方を基本的に変え、良いことをやれば報われるというポジティブなリンケージにすべきだ。

 ニジェールについては、ウランをイランに輸出するかどうかという深刻な問題があるが、この点では、ニジェールがウランをイランに輸出したら安全保障協力をストップするという脅しではなく、対イラン輸出を思いとどまるなら、米国(又は欧州諸国)がウラン他の採掘と販売に協力する(民間企業が投資する)ということが望ましい。ニジェールのウランのほとんどはフランスが輸入しており、フランスが出来ることは大きいはずだ。

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