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ウィル・グラント(BBCメキシコ・中米・キューバ特派員)、キャサリン・アームストロング(BBCニュース)、イド・ヴォック(BBCニュース)
南米ボリビアの行政上の首都ラパスで26日、大統領官邸が兵士に襲撃されるクーデター未遂事件があり、発生から数時間後に襲撃を率いた前軍司令官が逮捕された。
複数の装甲車と部隊はこの日、政府の主要施設があるムリージョ広場に陣取ったが、後に撤退した。
反乱軍のリーダー、フアン・ホセ・ズニガ将軍は「民主主義の再構築」を望んでおり、ルイス・アルセ大統領を当面の間は尊重するが政権交代はあり得ると述べていた。ズニガ将軍は逮捕された。
アルセ大統領はクーデター未遂を非難し、「民主主義を支持するために(中略)まとまり、結集する」よう国民に呼びかけた。
アルセ氏は大統領官邸から、「ボリビア国民の命を奪うクーデター未遂を再び許すわけにはいかない」と、国民向けのテレビメッセージで語った。
この発言が民主派のデモ隊の共感を呼んだのは明らかだった。彼らは政府を支持するため街頭に繰り出した。
アルセ氏はまた、エボ・モラレス元大統領を公然と批判したズニガ将軍が軍司令官を解任されたとの報道は事実だと認め、後任を任命すると発表した。
モラレス元大統領もクーデター未遂を非難するとともに、ズニガ将軍とその「共犯者たち」を刑事告訴するよう求めた。
ボリビアの検察庁は刑事捜査を開始した。
部隊率いたズニガ将軍、「祖国を取り戻す」
今回のクーデター未遂が、より広範な権力崩壊というよりは、短期間の、軽率な武装蜂起だったことが明らかになりつつある。
それでも、ズニガ氏の軍事反乱が単発の事件だったのかどうかを見極めるうえで、今後数週間が重要になるだろう。
確かに、政府は以前よりぜい弱なように見えるし、アルセ政権を倒そうとする者が出てくるかもしれない。ただし、軍を介してではなく政治を通じてにはなるが。
そのうえアルセ氏は、影響力のある元大統領で、左派の長老モラレス氏の支持に頼ることもできる。
モラレス氏は自身の支持者、とりわけコカ栽培農民運動に関わったボリビアの先住民たちに、クーデターの企ての終結を求めて街頭に出るよう呼びかけた。
こうした大衆の力の誇示は、ヘアニネ・アニェス前大統領ら「政治犯」の釈放も含む、ズニガ氏の計画に対する決意を固めるのに一役買ったかもしれない。
ムリージョ広場が部隊に占拠された後、ズニガ氏は「我々は祖国を取り戻す」と語った。
「エリート層がこの国を乗っ取り、国を破壊した」
ズニガ氏は24日にテレビ出演した際、モラレス氏が来年の大統領選に再出馬すれば同氏を逮捕すると発言。ズニガ氏はその後、軍司令官を解任された。ボリビアの裁判所は昨年、大統領を計2期以上務めることを禁止する判決を下しており、モラレス氏には立候補資格はない。
大統領らは武力による政変を非難
アルセ氏とモラレス氏はかつては盟友だったが、近年では意見不一致が進んでいた。しかし、ボリビアの政変を強行するために軍を利用するやり方は、どちらも非難している。
モラレス氏には、2019年の大統領選で開票結果を不正に操作したとして軍幹部によって退陣させられ、メキシコに亡命した過去がある。
2005年にモラレス氏が政権を握る以前のボリビアは、アメリカ大陸で最も政治的に不安定な国の一つだった。モラレス政権がその不名誉な終わりを迎えるまでは少なくとも、アンデス山脈がそびえ立つこの国に切望されていた安定がもたらされていた。
2019年の選挙後の不安定な時期を経て、大統領に選出されたアルセ氏にとっては、クーデターへの対応の速さに勇気づけられたことだろう。
ヴェネズエラやコロンビアの左派政権などの近しい同盟国は、ボリビアの状況を非難し、民主主義の維持を呼びかけた。米政府も冷静な対応を求めた。
アルセ氏の社会主義的統治に反対する国民でさえ、かつての南米のように民主的に選ばれた指導者を、人権侵害の著しい軍部が武力で追い出すという暗黒時代への回帰は、決して望んでいないとみられている。