2024年7月8日(月)

BBC News

2024年7月5日

サー・ジョン・カーティス、BBC投票専門家

4日に行われたイギリス総選挙で、労働党は予想通りの圧勝を収めたと思われる。ただし、1997年の総選挙で同党のトニー・ブレア党首(当時)が獲得した議席数には、わずかに及ばなかった可能性がある。

また、2017年の総選挙でジェレミー・コービン前党首が獲得した得票率を下回るかもしれない。

一方、保守党の得票率と獲得議席数は、いずれも同党史上最低となる可能性がある。獲得議席数の見通しは、これまで保守党が強いとされてきた選挙区で、得票数が大きく減少したことを受けたものだ。これらの選挙区では、新党リフォームUKを支持する声が最も高かった。

保守党の苦境に追い打ちをかけるのが、労働党の支持率上昇だ。これはとりわけ、労働党が前回の総選挙で、保守党に次いで2位だった選挙区で顕著だった。同様に自由民主党も、前回選挙で保守党に次いで2位だった選挙区でとりわけ支持を伸ばした。2015年まで自由民主党が抑えていた選挙区でも、同党は今回特に好調だった。

こうしたパターンが繰り返されたことが、保守党は大幅に議席数を減らした一番の理由だと考えられる。

住宅ローンが保守党に打撃

保守党は、世帯の3割以上が住宅ローンを抱える地域で、大きく後退したようだ。これはおそらく、リズ・トラス前首相の「財政イベント」によるダメージを反映している。

一方、リフォームUKは、多くの世論調査が予想したよりも多くの議席を獲得しそうだ。これは前述のように、保守党が議席を保持していた選挙区で大幅に得票を減らしたことが主な理由だが、一方で、2016年のブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)の是非を問う国民投票で、離脱に投票した人が多い地域でも、リフォームUKは大幅に前進した。この傾向は、現職が保守党の選挙区で特に顕著だ。

しかし、リフォームUKが実際に議席をいくつ獲得するのかは、きわめて不透明だ。

BBCの分析モデルによると、同党が当選する可能性はあるものの、実際に勝つ確率は比較的低いという選挙区がたくさんある。

労働党はどこで躍進したか

「健康状態が悪い」という回答は、「相対的はく奪」の尺度のひとつだ。そして労働党は、こう答えた人口の割合が高い選挙区や、2016年の国民投票で「EU離脱」に投票した人の割合が高かった地域で増加している。また、スコットランドで大幅に得票を伸ばした一方、労働党が自治政府議会の多数を2021年以来占めてきたウェールズでは、伸び悩んでいる。

自由民主党は、保守党に次いで2番目に得票率が高い選挙区で比較的健闘している半面、保守党が労働党の挑戦を受けていた選挙区では、得票率がやや低下している。

また、党首のサー・エド・デイヴィーが目標の一つとしていた、2016年に「EU離脱」票が比較的多かった地域でも、自由民主党は健闘しているようだ。

イングランドとウェールズ緑の党は、人口が比較的若い地域で特に高い支持を集めている。こうした地域で緑の党が成功を収めていることは、全国レベルで労働党の得票率が40%を下回る可能性がある理由の一つかもしれない。ただし緑の党は、全国的に均等に票を獲得し、総選挙では過去最高の得票率を記録したにもかかわらず、獲得できる議席は2~3議席にとどまる可能性がある。

スコットランドはどうなるのか

スコットランドでは、世論調査で予想されていたよりも、与党・スコットランド国民党(SNP)がさらに大幅な後退を強いられているようだ。ただし、自分はイギリス人ではなくスコットランド人だと認識している人の割合が高い地域では、SNPはそれほど支持率を落としていない様子だ。

出口調査は、スコットランドでサンプル数が少ない。もしこの調査が、労働党のSNPに対する優位性を少しでも過大評価していた場合、SNPの獲得票数はもっと多くなる可能性もある。

出口調査で労働党の大幅な躍進が予想されているスコットランド全体、そしてSNPの予測については、非常に慎重な扱いが求められている。

(英語記事 Sir John Curtice: Understanding the exit poll numbers

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cd10jp9njveo


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