終盤に入った東京都知事選。都民の審判結果は神のみぞ知るだが、ひとつだけはっきりしているのは、今回を機会に選挙運動のありかたの見直しが進むということだ。
候補者を擁立した一部の党が、選挙運動、表現の自由を口にしながら、実際は存在感誇示、ビジネスに利用していると批判されている。規制強化は必要だろう。
しかし、もろ手を挙げて歓迎していいのか。将来、権力者側に悪用されないと断言できるか。杞憂にすぎないとしても、「自由」を叫ぶことによって、逆に自由が侵害される懸念を引き起こすとしたら皮肉であり、罪が深い。
大量出馬で掲示版占拠、拘置中の出馬も
6月20日の告示日には、現職小池百合子氏、元行政刷新相の蓮舫氏らが名乗りをあげ、さすが〝首都の顔〟を選ぶにふさわしい華やかさだった。
しかし、その裏で異常な事態が進行していた。立候補者が過去最高の56人にのぼり、都内1万4000カ所に用意されたポスター掲示場(いずれも48人分)の枠に不足が生じた。
届け出が49番以降の候補者に対してはクリアファイルを渡し、それを掲示板に掲げてもらうことで急場をしのいだ。すでに報じられているとおりだ。
都選管の対応について、一部メディアは、「54人が前日までの書類の内容確認を終えていた」(朝日新聞6月22日付30、31面)として、その不手際を批判している。事前に予想されていた事態への備えを怠った選管が批判の矢面に立たされるのは当然としても、そのこと自体問題の本質ではないだろう。
「NHKから国民を守る党」からは、当選者が1人の首長選であるにもかかわらず、関係団体を含め24人もが出馬した。
この団体は、一定額を寄付した人に、掲示場1カ所24のスペースへ独自のポスターを掲げることを認め、その結果、候補者ではない人の独自デザインのものが登場する結果となった。渋谷区内の掲示板には選挙と無関係な風俗店の広告が貼られ、党首が警視庁から風営法違反の疑いがあるとして警告を受けた。