2024年7月5日(金)

Wedge OPINION

2024年7月1日

 4月に行われた衆院東京15区補選にからみ、選挙妨害の疑いで逮捕・起訴された「つばさの党」代表の出馬にも驚いた。拘留中だが、有罪無罪が確定したわけではないから出馬は法的に問題がないとはいっても、他陣営の警戒感は強い。

 東京15区補選の期間中、候補者や代表が、演説中の他候補に詰め寄って大声で罵倒したり、選挙カーで執拗に追い回したりして威嚇した。主義主張での秩序立った論争ではなく、乱暴な言動で他候補を文字通り追い詰め、その動画をライブ配信する手法は、閲覧を増やすのが目的ではないかとも指摘された。

 他陣営は候補者にボディガードを同行させるなど自衛手段をとり、警視庁も警備を強化した。

政府も規制に向け腰を上げる

 「法の範囲内なら何をしてもいい」というのが両グループの共通点(東京新聞)で、選挙がもつ本来の趣旨を損なうとして、市民団体などがすでに規制を求める署名運動を始めている。当局にも動きがみられる。

 林芳正官房長官は、つばさの党関係者の逮捕時、「候補者、関係者はルールを順守し、公正、適切に選挙運動を行わなければならない」とコメントした。いわずもがなのことを言わなければならないところに事件の異常さがある。

 今回の掲示板譲渡問題について林官房長官は、規定がないことを認めながらも、「候補者以外、使用はできるものではない」との見解を明確にした。その一方で、法制度の見直しは、「国会各党で議論していただく」と述べ、国会での議論を見守りたい考えを明らかにした。

都知事選で掲示された選挙とは関係のないポスター(アフロ)

 自民党の茂木敏充幹事長も「公選法が規定していない問題が発生している」として法改正を含めた見直しの必要性に言及している。

容易ではない改正点の合意

 国民の関心の高い問題であるため、法改正について国会の各党各派、有権者のコンセンサスを得るのは容易かもしれない。しかし、問題は見直しの内容、基準だ。

 今後、さまざまな案が出され、国会内外での議論も活発化するだろうが、選挙運動ひいては言論、表現の自由にかかわる微妙な問題だけに早急に結論を得るのはむずかしいだろう。最終的に法改正が実現したとしても、運用上の問題、恣意的な適用の恐れへの懸念も払しょくできない。

 2019年の参院選で、応援演説中の安倍晋三首相(当時)にヤジを浴びせて警察官に排除された男女2人が損害賠償を求めた訴訟で、札幌高裁が、警察に行き過ぎがあったとして1人に賠償を認めたケースがあった。演説へのヤジが節度を欠く激しいものだったにしても、こうした事例を見るにつけ、取り締まる側に悪意はなくとも、結果的に法の乱用と同様の結果を招くのではないかとの疑念が生じてもやむをえまい。


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