2024年11月23日(土)

Wedge OPINION

2024年7月1日

 日本維新の会、国民民主党が、つばさの党の問題を受けて公選法改正の独自法案を提出した際、与党内からも「まずは現行法を厳格に運用することが重要だ」(山口那津男・公明党代表)という指摘がなされているのも、国民の間に懸念が広がりかねないことを認識したうえでの発言とみられる。林官房長官が議論を国会に委ねる考えを示したのも同様だろう。

当局による違反明確化求める声も

 規制強化の具体策についての議論はすでに始まっている。維新、国民民主党の法案は、選挙の自由妨害について「著しく粗野または乱暴な言動」と明記した。

 専門家、研究者からの指摘も少なくない。掲示板譲渡防止の具体策として、東北大学大学院の河村和徳准教授(政治情報学)は、ポスターに候補者自身の名前と写真を掲載することを義務付け、抑止効果を高めることなどを提案する。

選挙ポスターは、候補者本人のものであることを義務付ける必要性も指摘されている(WEDGE)

 河村氏はさらに、過去の摘発例などを参考に、総務省、警察当局が選挙違反の基準を明確化、それを立候補書類の事前確認などの機会に徹底すべきとしている。今後の法改正議論において参考になる見解だろう。

主義主張超えた国民共通の懸念

 戦前の反省から、日本の中央政府、警察は、選挙運動の規制を躊躇してきた。「羹(あつもの)に懲りてなますを吹く」類だろうが、公選法改正が実現した時において必要なのは、慎重な運用の担保だ。

 筆者は特定の思想、政治的な立場に与しているわけではない。〝反権力〟を叫ぶものでもないし、日夜激務にいそしんでいる警察当局に、敬意を払いこそすれ、敵視するつもりももちろん、ない。ただ漠然とした不安を感じているに過ぎない。

 取り越し苦労という反論もあろうが、リベラル・保守、与党・野党など特定の政治勢力を支持、反対するかに関わりなく多くの国民がいだく懸念だろう。

 衆院補選、都知事選での妨害、掲示板譲渡問題は、法制度の不備に付け込んだあざとい行為というほかはない。規制強化を招くことへの国民の不安をかきたてるとしたら、それだけでも責められるべきだ。

 しかしながら、これを機会に、民主的かつ有意義な法改正に向けて具体的なの論議が始まるならば、国家・国民には、むしろ「もって瞑(めい)すべし」だろう。

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