2024年10月6日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月8日

 ベトナムは、ロシアのウクライナ侵略への支持表明はしていないが、同時にロシアを疎外しないようにも注意している。先週末、ベトナムはスイスで開催されたウクライナ和平サミットを欠席した。また、ロシアのウクライナ攻撃を非難する4つの国連決議に棄権した。国連人権理事会からロシアを排除する動議には反対した。

(2)プーチン大統領のハノイでの発言は抑制的だった。

 ハノイでプーチン大統領は、米国に対する激しい言葉を抑え、貿易と歴史的関係についての当たり障りのない発言に終始した。昨年、米国との関係を強化したベトナムは、プーチン氏の訪問がどのように見えるかについて留意していた。ロシアは以前からベトナムに武器を供給しているが、武器調達や防衛について公の場で語られることはほとんどなかった。

(3)ベトナムにとっては、「バンブー外交」の見せ所だった。

 ベトナムは7カ国(露中米印韓日豪)と最高レベルの二国間関係を結んでいる。

 露越両国は、南シナ海のベトナムの石油・ガス開発から大きな利益を得ている。また、プーチン大統領は、ベトナムに石油・ガス製品を長期的に供給することを約束した。

 国際危機グループ(ICG)のフオン・レ・トゥー副所長(アジア担当)は、「プーチンの訪問は、大国間の競争や対立にもかかわらず、ベトナムがあらゆる国家との関係を維持する能力を示したものだ」と述べた。チョン書記長は、この外交を「バンブー外交」と呼んでいる。竹の枝のような柔軟性を発揮して、大国間の関係をバランスよく保つことができる。

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ベトナムの「したたかさ」

 プーチン大統領の訪越結果として、この論説は①プーチンにとっての一種の外交ショーだった、②プーチン大統領のハノイでの発言は、ベトナムの立場を考慮し抑制的なものだった、③ベトナムにとっては「バンブー外交」の見せ場だった、とまとめている。「的を射たまとめ」と思われる。

 今年3月、「グエン・フー・チョン書記長が、プーチン大統領と電話会談した際、3選の祝辞とともに越への招待を伝えた」と報道され、プーチン氏の中国訪問(5月16~17日)後、「プーチン大統領は、近く北朝鮮とベトナムを公式訪問する予定である」との報道が出るようになった。正直、北朝鮮訪問直後のプーチンを国賓として受け入れると、国際社会における「ベトナムの立ち位置」に誤解を招くのではないかと思ったが、逆に大国間の争いの狭間におけるベトナムの「したたかさ」を示すことになった。

 チョン書記長は、プーチンに対し「ベトナムは全方位外交を堅持し、特に周辺諸国との関係を強化して、包括的・戦略的パートナーをはじめとする重要パートナー国との相互関係を深化させていく、そして「4つのNoの国防政策」(①軍事同盟に加盟しない、②他国との対立に第三国の協力を求めない、③外国軍の基地設置・越領土での軍事活動を許可しない、④他国との関係において武力の使用や威嚇を行わない)を堅持していく」との立場を説明したと報じられた。


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