2024年12月21日(土)

勝負の分かれ目

2024年7月12日

 一つは遮音性の問題だが、NTTドコモは独自の遮音技術の開発や、外部技術の導入を検討する。具体的には、国立競技場の屋根の下にある通気口に吸音機能の高い遮音材を設け、一定の効果を見込む。

 今後はシミュレーションの実施を経て、実際に国立競技場での実証実験に入る。国立競技場の規模で効果が確認できれば、このノウハウを他の屋外スタジアムにも活用できるビジネスチャンスも広がると踏む。

 また、音楽コンサートやスポーツには、NTTグループが開発を進める先端技術を使って、これまでのインターネット回線よりも高速で映像や音声の送信が可能な次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の活用も見据える。

 もう一つの課題は、芝の維持・管理である。Jリーグの試合などが行われるスタジアム内の芝は、コンサート開催時などにステージなどを設けることによる損傷リスクがあり、その後に整備するまでの養生期間も必要になる。このことが、音楽コンサートの開催回数を制限する要因にもなっていた。

 国立競技場では従来、夏と冬の季節によって育ちやすい芝の品種を併用して整備を進めてきた。ドコモによれば、昨年、芝が荒れていることが問題になったのは、冬の時期の気温が想定よりも下がらず、冬の芝が育ちにくかったことに原因があったという。

 コンソーシアムはこの点に着目。夏と冬の時期に、シーズン毎に芝を完全に張り替えることで、芝が張られていない「空白期間」を4月と8月に設ける計画だ。この期間を活用することで、芝の状況に関係なく、音楽コンサートを呼び込むことを可能にする。

 芝の全面的な張り替えには従来よりもコストがかさむが、それでも音楽コンサートの実施回数が大幅に増えることで十分に回収できるという。

大規模改修で特別席を新設

 また、「グローバルな国際大会の誘致」は、例えばサッカーの日本代表戦や、海外のビッグクラブの親善試合などを想定し、ナショナルスタジアムの価値そのものを高める狙いがある。

 大会誘致をいかにビジネスにつなげるか。ベニュービジネスの担当部長である田中洋市氏は、スタジアムのネーミングライツ(命名権)による収入も見込む。

 ドコモは、国立競技場だけではなく、スタジアムやアリーナの施設運営ビジネスを強化しており、有明アリーナ(東京都)や25年オープンのIGアリーナ(名古屋市)の運営などに携わる。IGアリーナは、愛知県新体育館(愛知国際アリーナ)のネーミングライツを英金融サービスのIGグループが取得。日本経済新聞によれば、愛知県などの発表では契約金額は非公表だが「日本およびアジア地域で最大規模のアリーナ命名権契約の1つ」だという。

 田中氏はこうした実績を引き合いに出し、「ナショナルスタジアムの格付けやポテンシャル、収容規模などを鑑みれば、過去最高額での命名権契約になることが見込まれる」と強調する。


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