嫌悪感示すも、態度を軟化させるプーチン
ロシアのプーチン大統領はウクライナで起きていることに対し、嫌悪感を隠さない。彼は、「現在キエフで起きていることは、ウクライナの反政府派が主張する革命ではなく、ポグロム(暴力的な破壊)だ」と述べただけでなく、ウクライナ情勢の混乱は「外部から入念に仕組まれた」と述べ、2015年の次期大統領選挙で親ロシアのヤヌコービッチ政権を倒すために欧米が関与しているとの見方を示した。欧米陰謀説を利用してロシア国内や、旧ソ連圏の親ロシア勢力の求心力を強める思惑とみられる。
ロシアはウクライナがロシアとEUを天秤にかける中、確実にウクライナを引き留める策を模索している。プーチン大統領は、6日にロシアのソチでヤヌコービッチ大統領と会談し、ウクライナの情勢への対処方法を伝授したと言われる。
だが、EUとロシアを天秤にかけるウクライナ政権、そして親EU派が増えているウクライナ国民の状況をロシアも理解しており、ロシアのウリュカエフ経済発展相は12月9日の記者会見で、「ウクライナは関税同盟への加盟に強い関心を表明していない」と語るとともに、ウクライナの関税同盟加盟に関する合意は何もなく、加盟への道のりは長く厳しく、骨の折れるものとなると認めている。
プーチンも12月12日に、連邦議会に対する年次報告演説を行い、ウクライナに対し、ロシアが主導する関税同盟への参加交渉を呼び掛け、EUよりロシアとの協調を優先するよう求めた。その折、大統領は、ウクライナがこれまで関税同盟に部分的に参加する意向を示していたことに言及し、「実務レベルで交渉を継続する用意がある」と語った。だが、ロシアは従来、ウクライナにAAか関税同盟かの二者択一を迫っていたが、それよりは態度を柔軟化させているように見え、ウクライナの野党に配慮したものと思われる。
また、これまでロシアはウクライナが関税同盟に加入しなければウクライナが求めるガス価格の引き下げは不可能だとしてきたが、前篇の冒頭でも触れたように、17日のヤヌコービッチ大統領との会談で、ガス価格を約3分の1引き下げることを発表した。150億ドル(約1兆5400億円)の金融支援も、100ドル億ドル強の早急な融資がなければ財政破綻するといわれているウクライナにとってはまさに救世主だ。
今回の会談では関税同盟への署名はなかったが、野党側は「ウクライナの資産をロシアに“質入れ”した」「ロシアの影響力が益々強まる」として合意内容に強く反発し、デモの一層の過激化が予想される。米国も、ウクライナの街頭の人々の懸念に応えるものではないとして、ロシアを批判すると共に、ヤヌーコビッチ大統領に野党との対話を促すなど、波紋は大きい。