2024年7月30日(火)

BBC News

2024年7月30日

南米ヴェネズエラの大統領選挙で現職のニコラス・マドゥロ大統領が3選を果たしたと、選管当局が発表したことを受け、集計に不正があったと抗議する大勢の人たちが29日、首都カラカスの大統領官邸へ行進した。

ソーシャルメディアでは、「独裁者を倒せ」「みんなミラフロレス(大統領官邸のある場所)へ行こう」などのメッセージと共に、抗議の様子の写真が次々と投稿された。

BBCは、大型ライフルを持った覆面姿の兵士たちを乗せた軍の輸送車が、大統領官邸へ向かうのを目にしている。

カラカスの通りでは放水車を備えた軍の部隊や警察が、抗議する人たちが官邸に接近しないように抑制している。

マドゥロ大統領の支持者たちや、大統領を支持する民兵組織も集まり始めている。

マドゥロ大統領は、開票結果を否定する野党勢力がクーデターを呼びかけていると非難し、「今日のこの状況は初めてではない」と述べた。

「(野党は)またしてもヴェネズエラに、ファシストで反革命的なクーデターをもたらそうとしている」と大統領は批判した。

検察長官は道路の封鎖や抗議行動に伴う違法行為はすべて、法律の規定に従い最大限に処罰すると表明。すでに32人を電子記録破壊や暴力扇動などの疑いで拘束していると述べた。

ヴェネズエラ選管は28日、マドゥロ大統領の3選を発表した。この翌日には、首都の各地で抗議が相次ぎ、警察は催涙ガスを使用した。

野党陣営は、マドゥロ氏に対抗するため一本化した野党候補エドムンド・ゴンザレス氏が得票率73.2%で圧勝したはずだと主張し、マドゥロ大統領の勝利宣言を否定している。

投票前の複数世論調査は、ゴンザレス氏の圧勝を予測していた。

深刻な経済危機が続き、国民の不満が広がるなか、野党陣営は在任11年になるマドゥロ氏を追い落とそうとまとまり、ゴンザレス氏を強く支持していた。

国際社会、投票データの開示求める

複数の西側や中南米の諸国、国連を含む複数の国際機関は、ヴェネズエラ当局に個々の投票所の投票記録を公表するよう呼びかけている。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は29日、「(ヴェネズエラ選管が)発表した結果は、ヴェネズエラ国民の意思も投票も反映していないと、深刻な懸念を抱いている」と述べた。

さらに同日、アメリカ政府幹部は記者団に対する電話会見で、ヴェネズエラ選管が公表した開票結果は「開票速報など複数の情報源から我々が得ていたデータと符合しない」として、「発表された結果は、国民の投票内容と食い違う可能性がある」と指摘。

「我々はそれを主に懸念しており、そのためヴェネズエラの選挙当局に、自分たちが発表した数字を裏付けるデータを公表するよう求めている」のだと、米政府幹部は述べた。

ただし、米政府幹部は今回の選挙結果がアメリカ政府の対ヴェネズエラ制裁にどう影響するかについては言明を避けた。

「出ていけ」、「自由を」

マドゥロ氏の勝利宣言を受けて、多くのカラカス市民は自宅や表の通りで鍋などをたたいて鳴らした。雨の中、往来に立って「アフエラ(出ていけ)」、「リベルタード(自由)」と連呼する人たちもいた。

幹線道路でタイヤが燃やされたり、路上に集まる大勢に対してオートバイの警官たちが催涙ガスを使ったりする様子も撮影されている。

BBCは、カラカス市内で人口が密集する「ラ・ルーチャ(闘争の意味)」地区に集まった人たちに話を聞いた。

パオラ・サルザレホさん(41)は、発表された大統領選の結果は「ひどい詐欺だ。こちらは(得票率)70%で勝ったのに、向こうはまた同じことをした。また我々から選挙を奪った」と述べ、「若者のため、この国のために、もっとましな未来が欲しい」のだと訴えた。

パオラさんの父ミゲルさん(64)も同意し、「(マドゥロ氏は)選挙に負けた。もうあそこにいる権利はない」と指摘。「若者にもっと良い未来を与えないと、若者は国を出て行ってしまう。きちんと働いてきちんと稼げる場所に行ってしまう。この国は豊かなのに、あの男がすべてを破壊している」と述べた。

ミゲルさんはさらに、「若者がみんな出て行ってしまったら、ヴェネズエラには年寄りしか残らなくなる」と話した。

国旗にくるまったクリストバル・マルティネスさんは、選挙結果が「詐欺」だと言い、今回の選挙は特に若者にとって大事だったと話した。「若者のほとんどは無職」で、「その大半は勉強していない」からだという。

「生まれて初めて投票した。朝の6時から9時ごろまで(投票所に)いた。大勢が道に集まっていた」とマルティネスさんは言い、「政府に不満な人が多かった。大半の人は変化を求めて、選挙に参加していた」と述べた。

マドゥロ氏が大統領になって長いものの「変化など何もない」上に、「チャヴェス大統領が死んでからひどくなった」と、マルティネスさんは話した。

マルティネスさんは、政府に好意的な高齢者は食料配給などで暮らすことに満足しているものの、「自分たちは変化が欲しい。まともな仕事がほしい。この国のため良い未来が欲しい」のだと強調し、「以前のようなひどい事態にならないよう、外国の人たちに助けてほしい」とも述べた。

(英語記事 Venezuelans head for presidential palace to protest against election result

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/crgm9v40w7zo


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