英イングランド北西部サウスポートで29日午前、子供向けのダンス教室に刃物を持った男が押し入り、子供2人を殺害し、子供9人を負傷させた。負傷した子供のうち6人が重体のほか、子供たちを守ろうとした大人2人も重体という。近隣の村に住む17歳少年が、殺人や殺人未遂の疑いで逮捕された。
警察によると、犯行動機は「不明」だが、テロ関連の事件としては扱っていない。共犯がいるという認識もしていないという。
サウスポート・ハート通りで起きた事件現場を目撃したひとりは、「恐ろしい」状況で「こんなことは見たことがない」と話した。
イギリスではほとんどの子供にとって、今週から夏休みが本格的に始まったばかり。
マージーサイド警察のセリーナ・ケネディー本部長は記者会見で、現地時間午前11時47分の通報を受けて現場に急行した警官たちは、多くの子供を含む複数の被害者が「すさまじい攻撃」に遭い、重傷を負っている様子を見て、衝撃を受けたと話した。
「子供たちは、ダンス教室で開かれていたテイラー・スウィフトをテーマにしたイベントに参加しており、そこに刃物を持った犯人が侵入し、子供たちを襲い始めた」のだというと、本部長は説明した。
また、「負傷した大人たちは、勇敢にも襲われる子供たちを守ろうとしたのだと承知している」と述べ、「自分も2人の娘の母親として、そして5歳の孫娘のおばあちゃんとして、被害者の家族たちが今どれほど苦しんでいるか想像しようとしても、想像もつかない。私たち全員、心からのお悔やみといたわりの気持ちを送りたい」と話した。
ほかにも国王夫妻や皇太子夫妻、キア・スターマー首相など大勢が、被害者をいたわる言葉を発表している。
現地メディアの記者によると、ダンス教室は倉庫を改修した建物に入る子供クラブで開かれていた。
現場の隣で自動車の修理工場を経営するコリン・パリーさんは、襲撃の直前に建物の外で、若者とタクシー運転手が料金の支払いでもめているのに気付いたと話した。緑色のフード付きパーカーを着てマスクをしていた若者が、料金の支払いを拒否していたのだという。
それから間もなく工場の従業員に呼ばれて外に出ると、複数の「小さい子供がみんな血を流している」のを見たという。「まるでアメリカみたいな光景だった。明るいサウスポートではなく」。
パリーさんはBBCラジオに対して、近くにいた建設作業員や住民が子供たちを避難させたと話した。「地域住民がみんなして団結して、手伝っていた。みんなして子供たちを助けようとしていた」
王室や首相が追悼
イギリス王室はソーシャルメディアに、チャールズ国王のメッセージを掲載。「サウスポートで今日起きた、まったく恐ろしい事件を聞いて、妻と私は非常に衝撃を受けている。あまりに悲劇的に命を失った人たちの家族や大切な人たち、そしてこの本当にとんでもない襲撃に影響を受けたすべての人に、私たちは心からお悔やみと祈りといたわりの言葉を送ります」と、国王は書いている。
皇太子夫妻もソーシャルメディアに掲載したメッセージで、「親として私たちは、サウスポートで今日殺害され、負傷した人たちの家族や友人や大切な人たちが、どういう状態でいるのか、なかなか想像するのも難しい。この恐ろしい卑劣な襲撃に巻き込まれた全員に、私たちの愛と思いと祈りを送ります」と書き、さらに事件に救急対応した職員たちの思いやりとプロフェッショナリズムに感謝した。
スターマー首相は、「今日私たちが目にして耳にしたことについて、国全体が深いショックを受けていると承知している」として、「国の全員に成り代わり、被害者や家族や友人たち、そして地域社会全体を、私たちが思っていて、追悼していると申し上げたい。皆さんがいま経験している悲しみと心の傷は、想像しようにもほとんど想像しきれないことも」と述べた。さらに首相も、「今日の実に厳しい状況」で事件に対応した現地の救急隊やマージーサイド警察に感謝した。
（英語記事 Two children dead and nine injured in dance workshop stabbing）
