さらに、EPCの会合がある。EPCは、制度と言うよりはイベントである。移民、エネルギー、安全保障といった問題について討議し、二国間会談も行われる。新たな好機を開く。
労働党は、EUへの再加盟、EUの単一市場への再加盟は考えないとしている。一方、食料品についての貿易、教育や研究における連携等とともに、安全保障・防衛面での協力についての新たな形の合意を求めている。EUのボレル外交・安全保障担当上級代表はラミー英外相をEU外相会合に参加するように示唆した。
EUとの関係以外でも、労働党政権は、パレスチナとの関係やグローバル・サウスとの関係についても、再構築を図っていくことになろう。
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対EU外交での変化の可能性
Economist誌が、7月4日の英国総選挙を受けて、5日に発足したスターマー首相の労働党政権の外交方針について論評した解説記事である。記事の端々に、ナショナリズムに傾斜し、EUを離脱した保守党政権から、スターマー党首の下で中道・実務路線を志向する労働党政権に政権交代があったことを歓迎し、期待するトーンがにじみ出ている。
英国がEUから法的に離脱したのが2020年1月31日であるが、同年末までの移行期間を経て、21年1月1日から完全にEUから離脱した。それ以降の英国は、欧州とは意識的に距離をとり、欧州以外のところで成果を上げ、EUから離脱したことのメリットをアピールしようとした。そうした外交を志向して「グローバル・ブリテン」や「インド太平洋への関与」といった標語が使用された。
EUと距離をとる外交をせざるを得なかった保守党政権とは異なり、労働党のスターマー政権にはそうした桎梏(しっこく)はない。新政権の下で、NATO、ウクライナ、米国、中国といった分野での外交は大きく変わらないと予想される中、前政権とは異なった方針がとられることが予想される分野は対EU外交となる。
ただ、労働党もEU再加盟を追求することはしないとの方針をとっている。現在ではブレグジットが失敗だったという者が世論調査で過半数を超えているものの、16年~19年のほぼ4年間、国政の相当の時間とエネルギーをかけてブレグジットを議論してきた経緯があるので、その結果を覆すのは容易ではない。