当面、労働党が目指すのは、EUとの親和的な関係である。現在は、EU離脱を問う国民投票が行われた時期に比して安全保障問題がより重要な国際情勢となっており、英国にとってもEUにとっても、互いに情報交換や連携を図るのは利益がある。他方、EUは壮大な法体系でもあり、EUにとって非加盟国の一つである英国との接近には一定の限界があろう。
7月18日に開催された欧州政治共同体(EPC)は、フランスのマクロン大統領の提唱により、22年10月に第1回会合が開催され、今回第4回目の会合を英国がホストした。EU加盟国に加えて、EUへの加盟候補国(9カ国)、潜在的加盟候補国(コソボ)、英国、スイス、ノルウェー等の幅広い欧州諸国が参加している。
ロシアとベラルーシには声をかけていない。EPCは、ロシア・ウクライナ戦争を受けて欧州の共通の課題を討議するとの狙いもあり、英国としては利用価値の高い仕組みである。
日本との関係性の変化は?
このような英国外交の変化は、日本にとってどのような影響があるのか。保守党政権がEUと距離をとる外交を行っていた時期は、日本やインド太平洋地域への注目度が上がった時期であった。「欧州以外のところで成果を上げる」ための狙いの一つとなったことで、追い風が吹いていた。
日英包括的経済連携協定の締結や、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への英国の加盟は、そうした成果の一端でもある。空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群の横須賀寄港(21年)も実現した。
今後、次期戦闘機についての日英伊三国での共同開発、空母「プリンス・オブ・ウェールズ」の日本寄港(2025年予定)等の計画がある。労働党政権の下で英国がより欧州外交に戻っていくことで、これまでの追い風が弱まる可能性は否定できないが、世界におけるアジアの比重の増大を踏まえ、英国が日本との関係やインド太平洋地域への関与を強化する流れを継続することを期待しつつ、状況の推移を注視したい。