2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月9日

 このようにIMFのコンディショナリティを受け入れた結果、国民の反発を招き政情が不安定化した例は過去にも例は多く、IMFの欠陥のようにも思える。途上国に対する融資の場合、貸し手と借り手の立場は対等とは言えず、借り手は無理をしがちであることが考慮されるべきであろう。

ルト大統領はどう動くか

 2022年の大統領選挙では、街頭での行商人から、財を成して政治家として副大統領までのし上がったルトが、自らを貧困層と若者の代表として大衆に売り込んだことが功を奏したとされる。このルトの手法が、今般、若者を政治意識に目覚めさせ、抗議活動の盛り上がりにつながったとされる。併せてルトが公約であった貧困層への支援や雇用機会の増加などに成果を上げていないことも影響したであろう。

 ルトは、変わり身も早く、内閣の閣僚を更迭し、更さらに議会で成立した増税法案に署名せず撤回した。その後の展開として、政敵であった野党指導者のオディンガがルトと共同で7月15日から6日間の対話を呼びかけるなど事態収取収拾に協力する動きもあったが、若者たちは対話を拒否し特段の成果を生まなかった。

 若者たちの間ではルトの辞任を求める声も高まっている。他方、直近ではルトはこれ以上の国内的混乱は許容しないとの強権的姿勢を示しており、再び抗議活動が全国で続く中で事態収拾の目途はたっていない。

 今後の事態の展開が懸念されるが、地域的にもケニアの安定は重要であり、IMFや米国は、今後も債務問題の支援に努めることが期待され、例えばケニア国債の米国による保証等の新たな措置も検討の余地があろう。

 従って、ルトとしては内政の安定に全力を挙げるべきであり、汚職対策やガバナンス改革、人権の保障等の抜本的な政策を示すと共に、野党の参加を得た挙国一致内閣を組織する等の大胆な対応を検討すべきと思われる。

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