2024年12月9日(月)

ヒットメーカーの舞台裏

2014年1月14日

 スマホに取り付けて通常のデジカメのように使うだけではなく、双方を分離させると用途は一気に拡がる。たとえば旅先で家族が一緒に写る時は、カメラのセルフタイマーを使ったりするが、このカメラだと分離させて自分たちに向け、スマホでモニターを確認しながらリモコン撮影ができる。また、カメラをセットしておいて野鳥の近撮といった具合に、楽しみ方はさまざまだ。シャッターを押すのも状況に応じ、カメラ側あるいはスマホ側が選べる。見た目はいかつい感じもするが、手に持つと意外と軽くて「QX10」の本体重量はわずか105グラム。スマホに取り付けても扱いやすい。

悩みぬいたカメラのかたち

 開発プロジェクトが発足したのは2012年の夏。「スマホと連携させるデジカメ」のアイデア自体は、その1年ほど前から社内にあったという。それまでカメラ設計に6年従事していたデジタルイメージング事業本部・商品設計部門設計2部の兼子夏海(36歳)がプロジェクトリーダーを担った。スマホ連携とはいっても、カメラの形状はおろか、スマホと合体させるのか否かといった使い方も白紙からのスタートだった。

 開発のヤマは着手早々に訪れた。「カメラのかたちそのもの」(兼子)の決定であり、スタートから半年をかけた。結論が、レンズにしか見えない円筒形だった。そこに至るまではまさに議論百出。原寸大の模型であるモックアップの製作は数十点に及んだという。レンズ形にしたのは「カメラだということが伝わりやすい」からだという。

 もっとも、「われわれは四角いカメラしか作ったことがなく、結論に至るまで時間を要すことになった」。設計するうえでも、バッテリーやメモリーカードといった部品などを収容するのは「四角い方がはるかに容易」なのだが、兼子はそこはチャレンジだと、踏み出した。結果、スマホに取り付けると確かにカメラらしいカメラになるのだが、レンズ状の本体だけでもカメラの機能を備えているということが、消費者には強いインパクトになった。

 また、使い方については当初、スマホに取り付けるか、そうでないか、二者択一的に検討を進めていたという。最終的には両方使えるようにし、このカメラの魅力が一気に高まった。より具体的な商品設計は、まず高画質タイプの「QX100」から入った。「スマホとの圧倒的な画質の差を訴求する」ためだった。

 次いで兼子は、これもスマホのカメラの弱点であるズーム機能に着目して「QX10」という遠くの撮影に強いバリエーションも当初から用意することとした。このことは、選択の幅を広げ、スマホで本格的な撮影を楽しみたいという多くの潜在ユーザーを掘り起こすことにもつながった。


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