2024年4月20日(土)

ヒットメーカーの舞台裏

2014年1月14日

 試作段階に入っても課題があった。一番の苦労は、Wi-Fiという無線を介すための動作の「タイムラグ」だった。シャッターを切ったり画像表示したりといったタイミングがずれる現象だ。スマホ側の処理能力によってもズレに差が出るという厄介な現象だった。さまざまなスマホで撮影をしながら、カメラ側のプログラムを日々改良するという積み重ねをタイムリミットまで続けた。

 スマホの登場以来、日本企業の独壇場であるデジカメの市場は縮小している。このカメラはスマホと手を握りながら、実はデジカメの新たな活路を拓こうとしている。兼子はスマホについて「ライバルというよりカメラを楽しむ人を育ててくれている」と見る。兼子のこうした敬意も伴うスマホへの温かい視線が、カメラとの楽しいコンビネーションを存分に引き出したような気がする。

(写真・井上智幸)

■メイキング オブ ヒットメーカー 兼子夏海(かねこ・なつみ)さん
デジタルイメージング事業本部 商品設計部門

1977年生まれ
広島県福山市に生まれる。3歳のときに東京へ引っ越し、以降東京暮らしとなる。小学生から野球を始め、同級生より身体が大きかったこともあって投手を務めるなど、外で活発に遊ぶ日々を過ごした。
1990年(12歳)
渋谷教育学園幕張中学に進学。中学では野球部に入部したが、高校では部活に所属せず、ゲームセンターに入り浸った時期もあった。高校2年時まで文系を選択していたが、高校3年時に物理、化学に興味を抱き、大学で理工系の勉学に励むことを決意。
1997年(19歳)
芝浦工業大学工学部電気工学科へ進学。ロボット製作に熱中し、ハードとプログラムの作成に日々を費やした。年に数回、様々な地方で行われるロボット競技会に参加し、何度か賞も獲得した。2001年、同大学大学院へ進学し、引き続きロボットの研究に注力した。
2003年(25歳)
ソニーへ入社。オーディオプレーヤー、ビデオプレーヤーなどを開発する部署に配属となった。06年にコンパクトデジタルカメラの商品設計を担当する部署へ異動となり、1年に約1モデルのペースで、主に「サイバーショット」の開発を計6モデル手掛けた。Wi-Fiや非接触充電など無線機能を搭載したカメラ設計の経験があったことから、レンズスタイルカメラの開発責任者に指名された。実は「開発に携わるまでカメラに興味はなかった」という。

◆WEDGE2014年1月号より










 

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