ロウギンは、バイデン政権の対イスラエル政策からの変化への期待がアラブ系米国人やイスラム教徒を引きつけ、ウクライナに冷淡なトランプとの相違がウクライナ系米国人を引きつける上で有利になると論じている。前者についてはミシガン州、後者についてはペンシルベニア州に言及しつつ接戦州での選挙戦上の意義を指摘している。
このロウギンの論説は、ハリスの外交政策上の立ち位置がもたらす選挙におけるプラス面に焦点を当てているが、現在の米国の分断状況を考えると、当然のことながら、それにはマイナス面もあろう。前記のような方針をとることは、親イスラエル勢力や米国第一主義者からの反発といった逆の作用も生むことにもなる。その意味で、ロウギンがプラス面だけに着目して選挙戦に有利となると論じているのは説得力に欠ける面がある。選挙戦に有利となるというためには、プラスがマイナスを上回るという論拠が必要である。
今回の米大統領選挙は、ジェンダー、人種、社会的価値に関わる問題へのスタンスなど、対照的な二人の候補者による争いとなったが、こうした相違点に、外交政策上の立ち位置も加わった形である。大統領選挙の結果を左右するのは、ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンなどの接戦州でいずれが勝利をつかむかであり、外交政策も含めてあらゆる手段を動員しての戦いである。
気になる日本との関係は?
ハリスは、当面、選挙で勝利した際にどのように世界と向き合っていくかよりも、どうやって選挙で勝利するかに集中しているであろうが、日本としては、当然のことながら前者も気になる。ハリス政権となる場合のアジア政策を考えてみると、日本・韓国・豪州・フィリピンとの関係強化、同盟国への拡大抑止強化、同盟国への安心供与といったバイデン政権の方針が大きく変わる兆しは感じられない。
ロウギンの論説でも、岸田首相との繋がりが言及されている。一方、たとえハリスが選挙で勝利したとしても、米国の有権者のかなりの割合が米国第一主義を支持しており、彼らと折り合いをつけつつ国政を運営することにはなるであろう。