2024年8月22日(木)

BBC News

2024年8月21日

ホリー・ホンデリッチ、BBCニュース

アメリカのカマラ・ハリス副大統領(59)は大急ぎで、自己紹介をやり直さなければならなくなった。自分のことをジョー・バイデン大統領の「副官」としてではなく、「最高司令官」になり得る人物としてふさわしいか見極めることになったアメリカの有権者に対して、自分がどういう人間なのかを伝えるために。

ハリス氏はイリノイ州シカゴにおける民主党の全国大会で、これまでのキャリアで最大の瞬間を迎えた。有権者たちはそこで、ハリス氏のかたわらに立つ家族や、ハリス氏がここまで来るのを助けてきた人たちのことも知ることになった。

11月の大統領選のライバル候補のドナルド・トランプ前大統領(共和党)とは違い、ハリス氏は一度しか結婚していない。そして、継母でもある。ハリス氏の現代的な大家族のメンバーを紹介する。

夫:ダグ・エムホフ

ハリス氏はカリフォルニア州司法長官だった2013年に、夫となるダグ・エムホフ氏(59)と出会った。エムホフ氏はエンターテインメント分野専門の弁護士だった。翌2014年8月22日に結婚して以降、米政界で出世の階段を上り続ける妻のそばに、エムホフ氏は常に寄り添ってきた。

2020年にハリス氏が女性で黒人、そして南アジア系として初めて副大統領となって歴史に名を刻んだ時、エムホフ氏はユダヤ系として初めて副大統領の配偶者となり、彼もまた歴史をつくった。さらに、大統領あるいは副大統領の配偶者が夫だったことも、これまでに一度もなかった。

エムホフ氏は同年、「セカンド・ジェントルマン」としての役割にフルタイムで集中するために法律事務所を退職した。副大統領の夫となったことで、それまで比較的無名だったエムホフ氏は広く知られるようになった。今では民主党の政策テーマを熱心に推進する人物として、また選挙戦ではハリス氏に最も忠実な代理人として認識されている。

継子:コールとエラ

ハリス氏は結婚と同時に、エムホフ氏とその最初の妻カースティン・エムホフ氏の間の子供2人、コールとエラの継母になった。

子供たちはハリス氏のことを、「カマラ」と「継母(ステップマム)」をもじった「ママラ」と愛称で呼んでいる。ハリス氏は自分の数ある肩書の中で一番大切なのは「ママラ」だと、たびたび語っている。そうした愛情は双方向のようで、現在30歳のコール氏と25歳のエラ氏は、ハリス氏を声高に支持している。

ハリス氏は「世界一のステップマム」。2020年の民主党大会で、エラ氏はハリス氏をそう紹介した。「あなたは私たちの父にとってだけでなく、3世代にわたるこの大きな混合家族の支えです」。

2017年にコロラド・カレッジをを卒業したコール氏は、父親の後を追ってエンターテインメント業界に入り、芸能事務所「WME」や俳優・プロデューサーのブラッド・ピット氏が設立した制作会社「プランB」で働いている。

エラ氏はニューヨーク市のパーソンズ・スクール・オブ・デザインを卒業後、2021年にモデル・マネジメント会社「IMGモデルズ」と契約し、ハイブランドのバレンシアガやプロエンザ・スクーラーなどのショーに出演した。エラ氏はアーティストでもあり、2021年にニットウエア・ブランドや「ソフト・ハンズ」クラブを立ち上げた多作なニッターでもある。

ダグ・エムホフの元妻:カースティン・エムホフ

コール氏とエラ氏の母カースティン氏にとって今の事態は、思いがけないことだったかもしれない。それでもハリス氏のことをあたたかく、肯定的に語っている。最近では、共和党の副大統領候補J・D・ヴァンス上院議員が過去に「子供のいない猫おばさんたち」は「みじめな人生を送っている」と発言していたことがあらためて浮上した際、ハリス氏を擁護した。

「コールとエラが10代のころから10年以上、カマラはダグと私の共同養育者です」と、カースティン氏は米CNNへの声明で述べた。「彼女は愛情深く、慈しみ深く、家族を必死で守り、いつもそばにいます。私はこの混合家族を愛していますし、彼女がその一員でいることに感謝しています」。

カースティン氏は制作会社「プリティバード」の創業者兼最高経営責任者(CEO)で、2020年大統領選では自身のクリエイティブな専門知識と人脈をもハリス陣営に提供した。

「みんな『元妻がいったい何をしたいって?』という感じでした」と、カースティン氏は同年にファッション誌マリー・クレールに語っている。

妹:マヤ・ハリス

ハリス氏は、たった一人の妹マヤ・ハリス氏ととても仲がいいことで知られている。

両親の離婚後、姉妹は主にカリフォルニア州バークリーで母シャマラ・ゴパラン氏に育てられた。

姉のようにマヤ氏もまた、法律の道へと進んだ。1992年にスタンフォード大学ロースクールを卒業後、訴訟代理人として働き、法学を教えることもあった。その後、アメリカの権利団体「アメリカ自由人権協会(ACLU)」の北カリフォルニア支部に入り、2006年に代表に就任した。

現在57歳のマヤ氏はやがて政界に転じ、2016年大統領選では民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン元国務長官の上級政策顧問を務めた。姉が出馬した2020年大統領選では選挙対策委員長を務め、姉が副大統領候補になるとバイデン=ハリス陣営の代理人になった。

姪:ミーナ・ハリス

マヤ氏の一人娘ミーナ氏は、ハリス家の伝統を引き継いでロースクールを卒業。ウーバーやフェイスブック、スラックといったシリコンヴァレーの一流企業を渡り歩きながら、米政界にも新人としてかかわり、カマラ「おばさん」の指南役になった。

2児の母でもあるミーナ氏は2017年に、女性をはじめ、世間になかなか注目されない人たちが率いるプロジェクトを取り上げる、メディア・物品販売の会社「フェノメナル」を立ち上げた。

ミーナ氏のキャリアは今も、おばのキャリアとリンクしている部分がある。

2020年6月には、おばと母親についての絵本「Kamala and Maya's Big Idea」(邦題:夢のビッグ・アイデア カマラ・ハリスの子ども時代)を出版した。同年の大統領選でバイデン氏がハリス氏を伴走者に選ぶと、フェノメナル社は「おばちゃん副大統領」スエットシャツの販売を始めた。

義弟:トニー・ウェスト

妹マヤ氏の夫で、姪ミーナ氏の継父(ステップファーザー)であるトニー・ウェスト氏は、ハリス一族の優れたメンバーの1人で、彼もまた弁護士だ。

スタンフォード大学ロースクール時代に、マヤ氏やまだ幼いミーナ氏と出会った。卒業後は民間部門と公共部門の両方で上級職に就いた。バラク・オバマ政権下では司法次官を、米ペプシコでは法律顧問を務めた。

現在はウーバーの最高法務責任者(CLO)だが、ウェスト氏もまた、義姉ハリス氏の選挙活動で重要な顧問として存在感を増している。

ウーバー側は今月、ウェスト氏はハリス陣営に専念するため休暇を取ると発表した。

「私は常に、家族が一番大事だと信じてきました」、「だから私は、自分の家族と義姉を選挙戦でサポートするために、フルタイムで身を捧げることに決めました」とウェスト氏は声明で述べた。

母:シャマラ・ゴパラン

ハリス氏の母シャマラ・ゴパラン博士は、娘が大統領選に出馬する姿を見ることなく亡くなったが、ハリス氏と妹は、科学者だった母親が自分たちのキャリアに影響を与えたと語っている。

「私自身の考えや経験に意味があると、初めて教えてくれたのは母だった」と、ハリス氏は2022年にフェイスブックに投稿した。「母にはよく『カマラ、あなたはたくさんのことを誰よりも先にするしれない。最後にならないようにしなさい』と言われました」。

2009年に亡くなったゴパラン氏は、科学を学ぶために19歳の時にインドからアメリカに渡り、乳がんの研究者となった。

公民権運動での活動を通じて、後に夫となるドナルド・ハリス氏と出会った。ドナルド氏は経済学者で、ジャマイカからの移民だった。ハリス氏は母親が自分と妹を育ててくれたとしており、父親との現在の関係は明らかになっていない。

(英語記事 The 'blended' family behind Kamala Harris

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy4ydkdz34po


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