トム・ベイトマン米国務省担当編集委員(長官に同行取材)
アメリカ政府高官は20日、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争の停戦と、ガザ地区で拘束が続く人質の解放の合意に向けてアメリカが働きかける中、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が妥協をせず最大限に要求する「マキシマリスト(最大限派)的な発言」をしていると非難した。ネタニヤフ氏の発言は「停戦合意を成立させるうえで建設的とはいえない」と、この高官は述べた。
ガザでの停戦と人質解放をめぐっては、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が合意交渉を推進するためイスラエルやエジプト、カタールを訪問している。
19日にはエルサレムで、ブリンケン氏とネタニヤフ氏が3時間にわたり会談した。
ブリンケン氏は会談後、停戦合意につながるアメリカの「橋渡しとなる提案」をネタニヤフ氏が受け入れたと明らかにしていた。
しかしイスラエル・メディアによると、ネタニヤフ氏はその後、人質家族と面会した際に、「戦略的な軍事的かつ政治的な資産」だと自ら位置付けるガザの複数地域にイスラエル軍を駐留させることを合意に盛り込まなければならないと、ブリンケン氏を「説得した」と語ったという。これらの地域には、エジプトと接するガザ南部の境界沿いも含まれる。
ネタニヤフ氏の発言をめぐる報道は、米政権をいら立たせたようだ。
「我々は、特にこれらの項目の一部に関する(イスラエル)首相のコメントを見た」と、前出の米政府高官は匿名を条件に語った。
「公の場で交渉するつもりはもちろんない。しかし、ブリンケン国務長官とアメリカが納得しているのは、停戦案をゴールラインに到達させるという必要性だけだ」
「ハマスもこの橋渡しとなる提案を受け入れれば、より技術的な(中略)詳細に関する協議が続けられると(中略)我々は十分に期待している」
「このように、自分たちの全要求がかなわないなら一切を認めないというマキシマリスト的発言は、停戦合意にとって建設的ではない。また、双方が橋渡しとなる提案に合意した際に、実施レベルや実務レベル、そして技術的な協議を前進させる能力を確実に危機にさらすものだ」
この高官の発言に先立ち、ブリンケン氏は同日、エジプトの海沿いの街エル・アラメインでアブドゥル・ファタ・シシ大統領と会談した。
エジプト政府関係者は、エジプト国境沿いのガザ側にイスラエル軍が駐留することに強く反対しているとされる。
ブリンケン氏はエジプト訪問を終え、中東歴訪で最後の訪問地カタール・ドーハに移動し、ムハンマド・ビン・アブドゥルアジーズ・アル・フライフィ国務相と会談した。
ブリンケン氏に同行取材するBBCのトム・ベイトマン米国務省担当編集委員は、ドーハを出発する直前に、会談内容について質問した。
ブリンケン氏はこの時初めて、橋渡しとなる提案にはイスラエル軍のガザ撤退に関する「詳細な計画」が含まれていることを明らかにした。
「この合意には、IDF(イスラエル国防軍)のガザ撤退スケジュールと場所が非常に明確に記されている。イスラエルはそれについて同意している」と長官は述べた。
ネタニヤフ氏がイスラエル軍のガザ駐留についてブリンケン氏を「説得した」とする報道についてBBCが尋ねると、「彼が言ったと引用されていることについては話せない。私が話せるのは、昨日(19日)一緒に過ごした3時間の間に彼から直接聞いたことだけだ」とした。
「(話せるのは)橋渡しとなる提案を、つまり詳細な計画を、イスラエルが承認したということだ。その計画には非常に明確な撤退のスケジュールと場所が含まれている」
この提案は「完全撤退」のためのものか問われると、ブリンケン氏は計画の詳細についてはコメントしないと答えた。
ハマスは最新の停戦案は先の交渉で合意に至った内容に対する「クーデター」だと指摘。新たな交渉を始めるのではなく、7月の協議に基づいた計画を提示するよう繰り返し主張している。
(英語記事 US criticises Israeli PM's 'maximalist' ceasefire stance)