2024年12月26日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月20日

 フィナンシャル・タイムズ紙のリーヒー北京支局長が、6月26日付け論説‘Why Xi Jinping is wary of Kim Jong Un’s embrace of Vladimir Putin’で、6月のプーチン訪朝は北朝鮮の中国離れを助長するとして中国を不快にさせている、と書いている。主要点は次の通り。

会談し、親密さを世界へアピールするロシアのプーチン大統領(左)と北朝鮮の金正恩委員長(ロイター/アフロ)

 新華社通信は、プーチン訪朝は米国の「神経を逆なで」したに違いないと書いたが、中国の苛立ちには何も触れていない。習近平はここ数カ月、朝露の緊密化を懸念してきた。北朝鮮は、ウクライナ侵攻のためにロシアが必要とする弾薬を供給し、その見返りにより高度な軍事技術の提供を約束された。

 中国は公の批判は控えている。しかし、不快感の兆候は増えている。

 4月、習近平は5年ぶりに中国共産党幹部を北朝鮮に派遣、両国の「深い友情」を再確認したところだった。分析家達は、金正恩・プーチンの関係深化は金正恩の中国からの独立心を高める可能性があるとして中国が懸念していると考えている。大胆になった金正恩は、ミサイル実験を行い、当該地域を一層不安定にする危険がある。

 プーチンの訪朝は、かかる中国の懸念を緩和するものではなかった。両首脳は「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名し、いずれかの国が攻撃を受けた場合には「利用可能なあらゆる手段で」即時の軍事その他の支援をすることを約束した。

 中国にとっての問題は、1961年署名の中朝友好協力相互援助条約があることだと中国の教授の沈丁立は述べる。これは、北朝鮮がロシアの戦争、例えばウクライナ侵攻に条約に基づいて関与することを義務付けられていると考えた場合、ロシアの敵国は北朝鮮を攻撃する可能性があることを意味する。それは、朝露条約が中朝相互防衛条約をトリガーし、中国が窮地に追い込まれる可能性があることを意味する。

 他の学者達はより楽観的で、中国の解釈も変化していると指摘する。復旦大学国際問題研究院教授の任曉は、中国にとり中朝条約は「朝鮮半島での如何なる紛争への自動的な軍事関与を意味するものではない」と述べた。朝露新条約の文言も、双方に余地を残すために曖昧にされている。

 対中依存がかつてなく高くなっている金正恩とプーチンが共に習近平を怒らせるようなリスクを冒すだろうか。沈丁立は、プーチンと金正恩が中国からの支援が十分でないと思っている可能性を示唆する。

 プーチンは、中国から汎用技術以上の支援とロシアのガス購入増大を求めている。金正恩は、中国が米国等に対抗するための支援を十分にしてくれていないと考えているかもしれない。


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