また、議員内閣制の優越の根拠となる、議員同士の議論によって、優れたリーダーを選ぶことができるという前提にも疑問を感じることがある。まず、国のこの先を考えるには外交安全保障や経済政策、福祉政策が重要と筆者は思っているが、それがほとんどなされていない。
現在の状況では、裏金問題をどうするかは避けて通れないが、その議論も議員同士で十分になされていないように見える。政治に金がかかることは仕方がないが(選挙期間を延ばせばより金がかかるだろう)、政治資金として集めたものを自分のポケットに入れれば脱税だ。
議員とは、税金の取り方を決める人たちなのだから、脱税はまずい。ただし、脱税でどれほど厳しく罰せられるべきかは分からない。トランプ氏は脱税で訴追されているが、支持者は気にしていないらしい。裏金問題をどうするかは自民党総裁候補者が必ず考えておかなければならない。
総裁選候補者たちとの議論は尽くされているのか
小林鷹之氏は、8月27日、裏金事件に関し「政治家が守らなければいけない自分で作ったルールを守らなかったところに本質的な問題がある」と指摘し、先の国会で成立した改正政治資金規正法の厳格運用が必要だとの認識を示した。これは自分の考えを述べない逃げとみなされたようだ。
石破氏は、8月24日に総裁選出馬を表明した際は裏金事件に関連した議員について、「公認するにふさわしいかどうか、徹底的に議論すべきだ」と発言していたが、翌25日には「新体制で決めることだ。まだなっていない者が予断を持っていうべきではない」と述べ、方針を変えた。
河野氏は、8月26日、政治資金収支報告書への不記載があった議員に対し、不記載額の返納を求め、返納して「けじめがつけば、あとは党の候補として国民の審判を仰ぐことになる」と次期衆院選で公認する意向を示したとのことである。これには、返せばよいのかという批判がある。
ここで3人の考え方しか紹介していないのは、これらの方々が、早く出馬表明したので発言録があるからだ(上記の発言は各紙報道による)。残りの方も考えを決めないといけない。
ここで不思議に思うのだが、20人の推薦人議員は、必ず問われるだろうこの問いについて総裁候補と議論しなかったのだろうか。特に石破氏が1日で意見が変わるのは議論していなかったということだろう。とすると、国会議員が国のリーダーを選ぶべきだという根拠もくずれてしまう。
代議員が選ぶのと国民が選ぶのとどちらが良いのかは難しい。とりあえず、どちらの方法でも国民の前で十分に議論していただきたい。