2024年9月5日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年9月5日

どちらが経済が良くなるのか

 国会議員が選ぶのと国民が直接選ぶのとどちらが良いだろうか。国会議員が選ぶべしというのは、国民は良く知っている国会議員を選び(数十万の選挙区ではよく知っているという訳にもいかないが、それでも首相よりはよく知っているだろう)、国会議員は良く知っている首相候補の中から優れた人を選ぶという2段階の選び方のほうが適切な首相を選べるという主張である。

 さらに、首相の仕事は、他の仕事とはかなり異なっている。どのような経済政策や外交防衛政策が良いのか、国会議員同士でよく議論して知識を蓄積しなければならない。そうした首相の仕事についての理解を深めている人を国会議員が選ぶべきだということである。つまり国民が直接選ぶ大統領制ではなく、国会議員が首相を選ぶ議院内閣制が優れているというのである。

 これに対して、国会議員が首相を選ぶというのは、エリート主義で、かつ、首相の仕事である経済政策や外交防衛政策について国民が理解できないというのは、国民一般の判断力を貶めているという反論があるだろう。

 どちらが良いか分からないので、筆者は、実例で決着を付けようと思ったことがある。戦後から1990年代までのアジアの民主主義の国では、日本、シンガポール、タイ、マレーシアなどが議院内閣制で、韓国、インドネシア、フィリピンなどが大統領制である(台湾で総統選挙が行われたのは1996年。民主主義の国とは言えなかった)。経済発展がうまくいったのは上記のすべての議院内閣制の国と韓国である。

 このことから、議院内閣制の国の方がうまくいくと判断していたのだが、最近のフィリピン、インドネシア、韓国、台湾の発展と日本とタイの停滞を比べると、経済政策について議院内閣制の国の方がうまくいくという考えはまったくあてにならなくなった。

国民の判断力を信じるには時間が要る

 国民の判断力を信じて大統領制にした方が良いのかもしれない。ただし、国民が正しく判断するためには、日本の選挙期間は短すぎる。米大統領選のように、1年近く選挙運動をするというのは現実的でもないし望ましくもないだろうが、1カ月ぐらいは必要ではないだろうか。

 選挙期間中に議論を戦わせれば、主張の矛盾も明らかになり、国民が騙されることも減るだろうし、候補者の知力も気力も体力も精神的安定性も主張の誠実さも判断できるだろう。問題を起こす知事や市長が生まれるのは、直接住民が選ぶ制度の欠陥が、短い選挙期間で増幅されるからではないだろうか。


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