2024年9月10日(火)

BBC News

2024年9月10日

シリア中部の軍事施設でイスラエルによる空爆があり、少なくとも18人が殺害された。シリアの保健相が9日、発表した。

シリアの国営通信SANAは、ハッサン・アル・ガバシュ保健相の話として、8日夜にハマ県マスヤフ近郊で攻撃があり、死者が出たほか、けが人も37人に上ったと伝えた。

イギリスを拠点とし、シリアに情報網をもつ「シリア人権監視団(SOHR)」は、攻撃で26人が殺害され、マスヤフ近郊の科学研究センターが目標になったと報告。同センターについて、武器開発に使用されていたとした。

シリアの外務省は今回の攻撃を「露骨な武力行使」と非難。イランの外務省も「犯罪的な攻撃」だと訴えた。

イスラエル軍は、攻撃に関する外国メディアの報道についてはコメントしないとした。

ただイスラエルはこれまで、シリアの目標に対する空爆を近年、何百回と実施していると認めている。それらの目標についてイスラエルは、主要敵国のイランや、同国と同盟関係にある武装組織に関係したものだとしている。

イスラエルの空爆は、昨年10月にパレスチナ自治区ガザで戦争が始まって以来、強まっているとされる。イスラエル北部では、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやシリアのグループなどによる越境攻撃が起きており、イスラエルはそれに対応し、空爆を強化しているとみられている。

どんな攻撃だったのか

SANAはシリア軍関係者の話として、8日午後11時20分ごろ、レバノン北西部上空を飛行していたイスラエル軍機が、「中部の多数の軍事拠点」に向けてミサイルを発射したと報じた。ミサイルの一部はシリアの防空部隊が撃ち落としたという。

SANAによると、高速道路が損傷し、森林地域で火災が発生するなどの被害も出た。被害地域の当局からは、高速道路の下に設置された光ファイバーケーブルや、高圧送電線など、重要インフラが損傷したとの報告が出ているという。

シリア外務省は今回の攻撃について、「いくつかの住宅地」が標的にされたとした。

国営テレビは、マスヤフの西の港湾都市タルトゥースの破損した建物とされる映像を放送した。

シリア人権監視団は、今回の空爆で「マスヤフの科学研究地域」や高速道路などにある建物や軍事施設が破壊されたと報告。民間人5人、シリア政府軍のメンバー4人、親イラン団体で活動するシリア人14人など、少なくとも26人が殺されたとした。また、攻撃された科学研究地域には、イラン革命防衛隊の将校が、短・中距離精密ミサイルとドローン(無人機)の開発プログラムに関係して6年間駐留していたとした。

ロイター通信は2人の情報筋の話として、化学兵器製造のための主要な軍事研究センターが数回攻撃されたと報じた。

しかし、イラン外務省のナセル・カナニ報道官は、イランが保有または保護している施設への攻撃は確認していないと記者団に説明。シリアとイランの政府に近い、地域の軍関係者も、ロイター通信の報道内容を否定した。

西側の情報機関はこれまで、マスヤフ近郊の科学研究センター(SSRC)の下部組織が、化学兵器禁止条約に違反して化学兵器を製造していると主張してきた。シリア政府はこれを否定している。

シリア人権監視団によると、イスラエルは今年これまで64回にわたり、シリア領土への空爆や砲撃を実施。兵器庫や車両、イランの支援を受ける民兵組織の本部など、約140の攻撃目標を損壊させた。これらの攻撃で、シリア政府軍の46人、ヒズボラの43人、イラン革命防衛隊の24人を含む、少なくとも208人の戦闘員と、22人の民間人が殺害されたという。

イランは4月、シリアの首都ダマスカスにあるイランの大使館ビルが空爆され、革命防衛隊の幹部2人が殺害されたことについて、イスラエルによるものと非難した。

イランは報復として同月、イスラエルに対し初の直接軍事攻撃を実施。300発のミサイルと無人機を発射したが、ほとんどはイスラエル軍とアメリカ主導の軍によって撃墜された。

(英語記事 Israeli strikes on Syrian military sites kill 18, health minister says

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cpvygg0re29o


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